ミニ四駆を速く安定して走らせるためには、様々なセッティングが重要ですが、その中でも「スラスト角」の調整は非常に重要な要素です。スラスト角はフロントローラーの角度のことで、これによってマシンの安定性やコーナーリング性能、レーンチェンジの攻略成功率などが大きく変わってきます。
初心者から上級者まで、「スラスト角をどう設定すれば良いのか」「なぜスラスト角が必要なのか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。この記事では、スラスト角の基本的な知識から、シャーシ別の推奨角度、調整方法、レーンチェンジ攻略のためのコツまで、独自調査をもとに詳しく解説します。
記事のポイント!
- スラスト角の基本的な役割とその重要性について理解できる
- 各シャーシのデフォルトスラスト角と調整方法について学べる
- レーンチェンジやコーナーリングに適したスラスト角の設定方法がわかる
- 速度と安定性のバランスを考慮したスラスト角調整のコツが身につく

ミニ四駆のスラスト角とは何かとその重要性
- スラスト角とはミニ四駆のローラーに付けられた角度のこと
- スラスト角の主な役割はマシンを地面に押し付けて安定させること
- 各シャーシにはデフォルトで設定されたスラスト角があることを知っておく
- スラスト角が大きいほど安定するが速度は落ちる特性がある
- レーンチェンジはスラスト角の調整が特に重要なセクションである
- モーターの種類に応じたスラスト角の設定が必要である
スラスト角とはミニ四駆のローラーに付けられた角度のこと
スラスト角は、ミニ四駆のフロントローラーに付けられた前傾角度のことを指します。一般的には「ダウンスラスト」と呼ばれることが多く、ローラーが前に傾いている状態を指します。
シャーシの前方から見ると、フロントローラーが下向きに傾いているのが確認できるでしょう。この角度は、マシンの走行特性に大きく影響を与えます。
実車のレーシングカーでは、空気の力を利用して車体を地面に押し付ける「ダウンフォース」を生み出すためにウイングなどを装着しますが、ミニ四駆ではそのような高速度が出ないため、代わりにローラーの角度で同様の効果を生み出しています。
スラスト角は、特に旋回時やレーンチェンジなどの際に、マシンが浮き上がったり暴れたりするのを防ぐ重要な役割を果たします。しかし、角度を付けすぎるとコースとの接触面積が増えて摩擦抵抗が大きくなり、速度が落ちる原因にもなります。
最適なスラスト角は、シャーシの種類やモーターのパワー、コースレイアウト、そしてマシン全体のセッティングによって変わってくるため、調整が必要になります。
スラスト角の主な役割はマシンを地面に押し付けて安定させること
スラスト角の主な役割は大きく2つあります。1つ目は、「マシンをコースに押し付ける」こと。2つ目は、「ジャンプ時に弧を描いてコースに復帰させる」ことです。
コーナーリング時、ミニ四駆は操舵機能がないため、壁に押し付けられながら曲がっていきます。この時、マシンは遠心力によって外側に傾く力が働きますが、スラスト角があることでマシンが浮き上がるのを防ぎ、コースに押し付ける力が生まれます。
また、レーンチェンジなどのジャンプセクションでは、マシンが飛び出す際に弧を描く軌道を取らせることができます。スラスト角がなければ、マシンは水平に飛び出してコースの壁よりも上に行ってしまうことがありますが、スラスト角があることでちょうど良い角度で反対側の壁に向かって飛ぶことができます。
独自調査の結果、例えばレーンチェンジでは、登りで姿勢が崩れるとコースアウトしやすく、スラスト角が足りないと壁より上に飛んでいってしまう傾向があることがわかりました。重心高とローラー高のバランスも重要で、これらがマッチしていないとローラー高さを調整してもレーンチェンジをクリアすることが難しくなります。
スラスト角の効果は「安定」を取るか「速度」を取るかというトレードオフの関係にあります。安定性を求めるならスラスト角を大きく、速度を求めるならスラスト角を小さくするという基本的な考え方があります。
各シャーシにはデフォルトで設定されたスラスト角があることを知っておく

ミニ四駆の各シャーシには、製造時からデフォルトで設定されているスラスト角があります。シャーシの種類によってこの角度は異なりますので、自分のマシンがどのくらいのスラスト角を持っているのかを知っておくことは重要です。
タイプ別のデフォルトスラスト角は以下の通りです:
シャーシタイプ | デフォルトスラスト角 |
---|---|
タイプ1〜4 | 0度 |
ゼロシャーシ | 5度 |
FMシャーシ | 5度 |
タイプ5 | 5度 |
スーパー1 | 8度 |
スーパーFM | 8度 |
スーパーTZ | 8度 |
スーパーX | 6.5度 |
VSシャーシ | 6.5度 |
スーパーTZ-X | 8度 |
MSシャーシ | 5度 |
スーパーXX | 6.5度 |
スーパーII | 5度 |
ARシャーシ | 5度 |
VZシャーシ | 5度 |
初期のタイプ1〜4シャーシにはスラスト角がほとんどなく、後続のシャーシでは走行安定性を高めるためにスラスト角がデフォルトで付けられるようになりました。
特に最近のVZシャーシなど、現行の主要シャーシにはすでに適切なスラスト角が付いていることが多いため、初心者の方は特に調整せずともある程度安定して走ることができるようになっています。しかし、コースレイアウトや使用するモーター、パーツ構成によっては、このデフォルト値を調整する必要が出てくるでしょう。
スラスト角が大きいほど安定するが速度は落ちる特性がある
スラスト角の設定は「安定性」と「速度」のバランスを考慮する必要があります。基本的に、スラスト角が大きい(角度が急)ほど、マシンはコースに強く押し付けられて安定して走行できますが、その分コースとの摩擦が増えて全体的な速度は落ちる傾向があります。
反対に、スラスト角が小さい(角度が緩い)ほど、コースとの摩擦が減って速度は上がりますが、コーナーリングやレーンチェンジなどでマシンが不安定になりやすく、コースアウトのリスクが高まります。
例えば、フルリジッド(ギミックなし)のマシンで現代のミニ四駆に挑む場合、極限まで0スラ(水平に近いスラスト角)に近づけることで速度を稼ぐ方法もありますが、その場合はレーンチェンジなどの攻略が非常に難しくなります。
特に注目すべきなのは、モーターのパワーによってもスラスト角の最適値が変わるという点です。弱いモーター(トルクチューン、アトミックチューンなど)では1.5〜3度、中程度のモーター(ライトダッシュ、ハイパーダッシュなど)では3〜5度、強力なモーター(スプリントダッシュ、パワーダッシュ、両軸ハイパーダッシュ、両軸マッハダッシュなど)では7〜9度を目安にするという情報もあります。
しかし、これはあくまで目安であり、実際には自分のマシン構成やコースに合わせて試行錯誤する必要があります。場合によっては、モーターのパワーに対して一般的な目安とは異なるスラスト角が最適な場合もあります。
レーンチェンジはスラスト角の調整が特に重要なセクションである
レーンチェンジは、ミニ四駆が走行中に特に難所となるセクションの一つです。速度が上がるにつれて、このセクションでコースアウトしてしまうことが多くなります。そのため、レーンチェンジの攻略にはスラスト角の調整が特に重要になってきます。
レーンチェンジでは、マシンが坂を上り、頂点付近で軽く浮いた状態で射出され、反対側の壁に飛んでいく挙動を取ります。この時、スラスト角が適切でないと、以下のような問題が発生します:
- スラスト角が足りない場合:マシンが壁よりも上に飛んでしまいコースアウトする
- スラスト角が強すぎる場合:マシンが強く押し付けられすぎて速度が落ち、レーンチェンジを越えられない
- 登り射出時に姿勢が崩れる場合:重心高とローラー高のバランスが取れていないため、マシンがロールしてコースアウトする
レーンチェンジをクリアするために、一般的なフロントバンパーを使用したマシンの場合、程よいスラスト角が必要になります。ただし、最新の現代マシンなど、特殊なローラー配置やギミックを持つマシンでは、ほぼ0スラでもレーンチェンジをクリアできる場合があります。
これには大きく2つの理由があります。1つはローラー配置(フロントローラーを前輪に近づけ、リアローラーを後ろに離す配置が多い)、もう1つはギミックによるスラスト変動です。例えば、提灯連動のフロントバンパーやアンカーなどは、レーンチェンジ突入時の衝撃や壁との摩擦によってギミックが動き、結果的に適切なスラスト変動を生み出すことができます。
レーンチェンジは、マシン構成のトータルバランスを端的に見ることができる最適なセクションとも言えるでしょう。スラストやローラー高さだけでなく、マシン全体の重心配置や剛性なども含めた総合的なセッティングが求められます。
モーターの種類に応じたスラスト角の設定が必要である
ミニ四駆では使用するモーターのパワーによって、最適なスラスト角が変わってきます。これは、モーターのパワー(前に進む力)が大きいほど、マシンを押さえつけるために必要な力も大きくなるためです。
モーターのタイプ別に、一般的に推奨されるスラスト角の目安は以下の通りです:
モータータイプ | 推奨スラスト角 |
---|---|
トルクチューン、アトミックチューンなどのチューン系 | 1.5°〜3° |
ライトダッシュ、ハイパーダッシュ | 3°〜5° |
スプリントダッシュ、パワーダッシュ、両軸ハイパーダッシュ、両軸マッハダッシュなど | 7°〜9° |
ただし、これはあくまで目安であり、実際の走行環境や他のセッティング要素との兼ね合いによって最適な角度は変わります。例えば、同じ両軸マッハダッシュを使用していても、マシン構成によっては3°程度のスラスト角で安定して走れるケースもあります。
モーターのパワーが強いほどスラスト角を大きくする理由は、強力なモーターほど高速で走行するため、コーナリングやレーンチェンジでの遠心力や浮き上がる力も大きくなるからです。それを抑えるためには、より強いダウンフォースが必要になります。
一方で、モーターのパワーが弱い場合は、過度なスラスト角はむしろ速度低下の原因になります。パワーが弱いモーターでは、コースとの摩擦を極力減らして速度を維持することが重要なため、最低限の安定性を保ちつつ、できるだけスラスト角を抑える方が良いでしょう。
また、「鬼スラ」と呼ばれる極端に大きなスラスト角は、一時的な対処法としては効果があるかもしれませんが、マシン全体のバランスを考えると必ずしも最適なセッティングとは言えません。特に最速クラスのフラットマシンでは、初期設定でも2度前後のスラスト角からスタートすることが多いです。

ミニ四駆のスラスト角を最適に調整する方法
- スラスト角の調整にはローラー角度調整プレートセットが便利である
- ワッシャーを使った簡易的なスラスト角の付け方は初心者でも簡単にできる
- バンパーレスマシンでのスラスト角調整方法は別の工夫が必要になる
- シャーシ別の推奨スラスト角は走行スタイルによって異なることを理解する
- スラスト角を測る方法は専用ツールかアプリを使うと正確である
- スラスト角を抜く(小さくする)テクニックも状況によっては有効である
- まとめ:ミニ四駆のスラスト角はマシンの特性とコースに合わせて調整すべき
スラスト角の調整にはローラー角度調整プレートセットが便利である
スラスト角を調整する方法はいくつかありますが、最も一般的で手軽な方法はタミヤから発売されている「ローラー角度調整プレートセット」を使用する方法です。このセットには、プレートタイプとチップタイプの2種類が含まれています。
プレートタイプは棒状になっており、出っ張りの数が傾斜の角度を示しています。出っ張りが1個で1度、2個で2度、3個で3度の傾斜が付きます。プレートは出っ張りがある方に向かって厚くなる構造になっているため、基本的には出っ張りがある方をリヤ側に設置します。
チップタイプは小さな部品で、取手部分に記されている丸の数が傾斜角度を示しています。丸が1個で1度、2個で2度、3個で3度です。チップも取手がある方が厚みがあり、取り付ける際はローラーの下と上のチップの向きを変えて設置するのがポイントです。
ローラー角度調整プレートセットの使い方は、取扱説明書を参考にするのが基本ですが、特にチップタイプは向きや取り付け方が少し分かりにくいこともあります。チップの裏面には傾斜の角度を示す丸はありませんが、形状で判断することができます。丸形は1度、四角形は2度、六角形は3度となっています。
このプレートセットを使えば、1度単位で正確にスラスト角を調整することができるため、細かいセッティングを行いたい方には特におすすめです。また、VZシャーシなど最新のシャーシにも対応しているので、幅広いマシンに使用可能です。
プレートセットは約200円台、より高級なHG角度調整チップセットは約600円前後で購入できます。価格もリーズナブルなので、持っておいて損はないアイテムと言えるでしょう。
ワッシャーを使った簡易的なスラスト角の付け方は初心者でも簡単にできる
ローラー角度調整プレートセットがない場合や、急場の調整が必要な場合は、ワッシャーを使った簡易的な方法でスラスト角を付けることができます。この方法は手軽で材料も入手しやすいため、初心者の方でも簡単に試すことができます。
基本的な方法は、バンパーの取り付け部分にワッシャーを挟むことでスラスト角を作り出すというものです。例えば、バンパーの下側(シャーシ側)の前方にワッシャーを挟むと、バンパーが前傾してスラスト角が付きます。
具体的な手順は以下の通りです:
- バンパーを固定しているネジを緩める
- バンパーの下側(シャーシ側)の前方にワッシャーを置く
- ネジを締め直す
ワッシャーの厚みによってスラスト角の大きさが変わるため、複数の厚さのワッシャーを用意しておくと調整の幅が広がります。一般的に、0.5mmのワッシャー1枚で約1度のスラスト角が付くと言われています。
また、キットに付属しているホイルシールを短冊状に切って使うという方法もあります。紙シールではなく、金属質感のホイルシールが適しています。このシールをプレートに貼り、大ワッシャーで挟むようにローラーを取り付けることで、スラスト角を調整できます。この場合も1枚で約1度の角度が付くとされています。
簡易的な方法では正確な角度の測定は難しいですが、走行テストを繰り返しながら少しずつ調整していくことで、自分のマシンに最適なスラスト角を見つけることができるでしょう。
ただし、これらの方法は恒久的なセッティングとしては耐久性に欠ける場合があるため、あくまで現場での応急処置や試験的な調整として使うことをおすすめします。長期的に安定したセッティングを望むなら、専用のプレートセットを使用する方が良いでしょう。
バンパーレスマシンでのスラスト角調整方法は別の工夫が必要になる

一部の改造マシンでは、既存のバンパーを根本から切り落として、カーボンやFRPで新たにバンパーを作るという「バンパーレス加工」が行われることがあります。この場合、シャーシに最初から付いているスラスト角が失われてしまうため、自分でスラスト角を調整する必要があります。
バンパーレスマシンでスラスト角を調整する主な方法は以下の通りです:
- 角度調整プレートやチップを使用する方法: この場合、ローラー軸ではなく、バンパーの根本で調整すると全体の角度をまとめて決められて便利です。ただし、細かな調整をしたい場合はローラーごとに個別に調整することもあります。
- ATバンパー(フロントアルミバンパー)での調整方法: ATバンパーを使用する場合は、ブレーキステーの上にローラー角度調整チップを接着剤で固定し、その上にATバンパー一式をセットするという方法があります。チップの厚みによってバンパーに傾斜が付き、スラスト角を調整できます。
- 同じ傾斜角度のチップを重ねる方法: 同じ角度のチップを重ねることで、厚さが均等な傾斜のないチップとして使用することもできます。取手部分は邪魔になることが多いので、チップを重ねて接着した後に取手を切り落とすと良いでしょう。
バンパーレスマシンでスラスト角を調整する際の注意点としては、左右のバランスが重要です。特にチップを使用する場合は、左右のチップの距離を極力離して設置した方が安定します。また、左右のチップの上下の位置がずれると、バンパーの傾き具合も不安定になるため、できるだけ平行になるよう配置することが大切です。
より正確に位置を合わせるには、仮設置したプレートをガイドにする方法がおすすめです。これにより、左右のチップの上下の位置をより正確に揃えることができます。
ただし、プレートやチップを置く位置によっては、想定したスラスト角と実際の角度が異なる場合があるので注意が必要です。実際の角度は走行テストを通じて確認しながら調整していくことをおすすめします。
シャーシ別の推奨スラスト角は走行スタイルによって異なることを理解する
ミニ四駆には様々なシャーシがありますが、それぞれのシャーシによって最適なスラスト角は異なります。また、同じシャーシでも使用するモーターや走行スタイル、コースレイアウトによって推奨されるスラスト角は変わってくることを理解しておくことが重要です。
シャーシ別の基本的な考え方として、以下のポイントが挙げられます:
- リアモーターシャーシ(タイプ1〜5、スーパーXX、ARなど):
- リアモーターマシンは前輪が軽くなりがちなため、フロントのグリップが重要です。
- ただし、リアのトルクが強いマシンの場合、フロントの回頭性が悪くなると駆動の負荷になるため、スラスト角とともにフロントのグリップ調整も考慮する必要があります。
- リアモーターマシンでは、フロントローフリ・リヤハードの組み合わせや、フロント幅の狭いタイヤとリア幅の広いタイヤの組み合わせが有効なことがあります。
- ミッドシップモーターシャーシ(MS、MAなど):
- モーターが中央にあるため、重量バランスが良好で、比較的小さめのスラスト角でも安定して走行できる傾向があります。
- ただし、MAシャーシのようにホイールベースが短いモデルでは、高速コーナリング時の安定性のためにある程度のスラスト角が必要な場合もあります。
- フロントモーターシャーシ(FM、スーパーFMなど):
- フロントに重量が集中するため、後輪が軽くなりがちです。
- リアの接地性を高めるために、フロントのスラスト角を適切に設定する必要があります。
さらに、B-MAXマシン(ボディをシャーシから浮かせる構造)とオープンマシン(フレキシブルな構造)でも最適なスラスト角は異なります。B-MAXマシンはより安定性が求められるため、やや大きめのスラスト角が効果的な場合が多いです。
また、ギミック(可動部分)の有無によっても調整は変わります。ギミックが多いマシンはスラスト角を抑えめにしても、ギミックの作用によって実質的なスラスト角が変動することがあります。例えば、提灯連動のフロントバンパーを持つマシンでは、レーンチェンジ通過時に提灯が開くことで自然とスラスト角が付く特性があります。
走行スタイルによっても推奨角度は変わります。攻めの走りを重視するならスラスト角を小さく、安定性を重視するならスラスト角を大きくするという基本的な考え方があります。コース攻略を最優先するなら、レーンチェンジの数や配置に合わせてスラスト角を調整することが重要です。
スラスト角を測る方法は専用ツールかアプリを使うと正確である
スラスト角を正確に測定することは、セッティングの再現性を高め、マシンの挙動を理解する上で重要です。スラスト角を測る方法にはいくつかあり、それぞれに特徴があります。
- 専用の角度計を使用する方法:
- ミニ四駆専用の角度計が市販されており、これを使えば最も正確にスラスト角を測定できます。
- 角度計をローラーの上に置き、水平を基準にしてローラーの傾斜角を直接読み取ります。
- 価格は1,000円〜3,000円程度のものが多く、精度を重視する方におすすめです。
- スマートフォンのアプリを使用する方法:
- 水準器や角度計のアプリを使えば、スマートフォンでもある程度正確にスラスト角を測定できます。
- スマートフォンをローラーに当てて角度を測りますが、この方法では測定の再現性に若干の課題があります。
- 無料や数百円程度のアプリが多く、手軽に試せるのが魅力です。
- 定規と三角関数を使用する方法:
- 定規を使ってローラーの高さの差を測り、三角関数でスラスト角を算出する方法もあります。
- 例えば、ローラーベース(前後のローラーの距離)が80mmで、前後のローラー高さの差が7mmの場合、 スラスト角 = arctan(7/80) ≈ 5度 となります。
- 工具が少なくても測定できる方法ですが、計算が必要になります。
- 目視で確認する方法:
- 経験を積んだユーザーなら、目視でもある程度スラスト角を判断できるようになります。
- 特に急いでいる場合や微調整を行う場合には、この方法も実用的です。
- ただし、再現性や正確性には欠けるため、重要なセッティングの際には他の方法と併用することをおすすめします。
正確なスラスト角の測定は、特に複数のマシンを使い分ける場合や、特定のコースに最適なセッティングをデータ化しておきたい場合に役立ちます。また、角度を変更した際の効果を確認するためにも、測定値を記録しておくことをおすすめします。
ただし、スラスト角は固定的なものではなく、マシンの状態(バッテリーの消耗具合やモーターの回転数など)やコースコンディションによっても最適値が変わることがあります。そのため、測定値はあくまで参考として、実際の走行テストを通じて微調整を行うことが大切です。
スラスト角を抜く(小さくする)テクニックも状況によっては有効である
一般的には安定性を高めるためにスラスト角を付けるセッティングが主流ですが、状況によってはスラスト角を抜く(小さくする)テクニックも非常に効果的です。特に速度を最優先したい場合や、特定のコースレイアウトでは、敢えてスラスト角を小さくすることでパフォーマンスが向上することがあります。
スラスト角を抜くメリットには以下のようなものがあります:
- 速度の向上:
- スラスト角が小さいほどコースとの摩擦が減少し、特に直線での速度が向上します。
- 高速域での抵抗が減ることで、バッテリーの消費も抑えられ、走行時間が延びる効果も期待できます。
- コーナーでの回頭性の向上:
- 適切にスラスト角を抜くことで、コーナーリング時の回頭性(曲がりやすさ)が向上することがあります。
- 特にフラットな高速コースでは、この効果が顕著に現れます。
スラスト角を抜く主な方法は以下の通りです:
- ローラー角度調整プレートの逆向き使用:
- ローラー角度調整プレートやチップを逆向きに使用することで、元々付いているスラスト角を小さくできます。
- 例えば、VZシャーシはデフォルトで5°のスラスト角がありますが、1°のプレートを逆向きに使えば4°まで減らすことができます。
- ワッシャーの配置変更:
- バンパーの上側の前方、または下側の後方にワッシャーを挟むことで、スラスト角を減らすことができます。
- ホイルシールを使う場合も同様に、プレート上面は前方、下面は後方に貼ることでスラスト角を抜くことができます。
ただし、スラスト角を抜く際には以下の点に注意が必要です:
- レーンチェンジの攻略が難しくなる:
- スラスト角が小さいとレーンチェンジでのコースアウトリスクが高まります。
- 特に高速で進入するレーンチェンジがあるコースでは注意が必要です。
- コースレイアウトに合わせた調整が必要:
- 同じマシンでも、コースによって最適なスラスト角は異なります。
- 練習走行を通じて、そのコースに最適なスラスト角を見つけることが重要です。
- 他のセッティングとの兼ね合い:
- スラスト角を抜く場合は、他のセッティング(特にローラー高さやマシンの重心)も合わせて調整する必要があります。
- スラスト角だけを変更すると、マシン全体のバランスが崩れることがあります。
実際の例として、アトミックチューン搭載マシンでスラスト角を緩くしたところ、スプリントダッシュ搭載マシンよりも周回速度が速くなったという報告もあります。これは、モーターパワーだけでなく、マシン全体のバランスやセッティングが重要であることを示しています。
スラスト角の調整は、マシンの特性や走行スタイル、コースレイアウトに合わせて柔軟に行うことが重要です。状況に応じてスラスト角を付けたり抜いたりすることで、マシンのポテンシャルを最大限に引き出せるようになります。
まとめ:ミニ四駆のスラスト角はマシンの特性とコースに合わせて調整すべき
最後に記事のポイントをまとめます。
- スラスト角はミニ四駆のフロントローラーに付けられた前傾角度で、マシンをコースに押し付けて安定させる役割がある
- 各シャーシにはデフォルトで設定されたスラスト角があり、タイプ1〜4は0°、VZシャーシは5°など種類によって異なる
- スラスト角が大きいほど安定性が増すが速度は落ち、小さいほど速度は上がるが不安定になるというトレードオフがある
- レーンチェンジの攻略には特にスラスト角の調整が重要で、適切な角度設定がコースアウト防止に繋がる
- モーターのパワーに応じたスラスト角設定が必要で、パワーが強いほど大きめの角度が推奨される
- スラスト角の調整には「ローラー角度調整プレートセット」が便利で、1度単位の正確な調整が可能である
- ワッシャーやホイルシールを使った簡易的な方法でも応急的にスラスト角を調整できる
- バンパーレスマシンでは、角度調整プレートやチップをバンパー根本に設置して調整する方法が有効である
- シャーシの種類や走行スタイルによって最適なスラスト角は異なり、リアモーターとミッドシップモーターでは考え方が変わる
- スラスト角の測定には専用角度計やスマートフォンアプリが役立ち、正確な数値化が再現性を高める
- 速度重視の場合はスラスト角を抜く(小さくする)テクニックも有効だが、レーンチェンジなどでの安定性とのバランスが重要である
- 最適なスラスト角は一概に決められず、マシン構成、使用モーター、コースレイアウトなどを考慮した総合的な判断が必要である
- 実際の走行テストを繰り返しながら、自分のマシンに最適なスラスト角を見つけることが上達への近道である
