ミニ四駆の世界で圧倒的な速さを追求するなら、モーター選びは最重要ポイントです。「どのモーターが一番速いの?」「公式戦で使えるの?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。実は速さを求めるなら単に高回転のモーターを選ぶだけでは不十分で、コースのレイアウトやご自身のマシン設定に合わせた選択が勝利への近道なのです。
本記事では、ミニ四駆モーターの種類や特性を徹底解説します。プラズマダッシュやウルトラダッシュといった非公式の超高性能モーターから、公式戦で使える最速モデルまで、タイプ別・用途別に詳しくご紹介。さらに回転数やトルク、ギア比との関係性など、モーター選びに必要な知識をわかりやすく解説します。モーターの慣らし方や性能引き出しのコツまで網羅した完全ガイドです。
記事のポイント!
- ミニ四駆モーターの種類と各モーターの性能特性について理解できる
- 公式戦で使用可能な最速モーターとコースタイプ別の最適な選択肢がわかる
- モーターの回転数・トルク・ギア比の関係性と最適な組み合わせ方を学べる
- モーターの慣らし方や性能向上テクニックを知ることができる

ミニ四駆で速いモーターの種類と特性
- 最速のモーターはプラズマダッシュモーターとウルトラダッシュモーター
- 公式戦で使用可能な最速モーターはスプリントダッシュモーター
- モーターの種類は片軸と両軸の2タイプに大別される
- チューン系とダッシュ系で異なる特性を持つ
- モーターの性能は回転数とトルクで表される
- 速さを決めるのはモーターだけでなくギア比との相性も重要
最速のモーターはプラズマダッシュモーターとウルトラダッシュモーター
ミニ四駆の世界で最速を誇るモーターといえば、プラズマダッシュモーターとウルトラダッシュモーターの2種類です。独自調査の結果、これらのモーターは他のあらゆるモデルを圧倒する驚異的な性能を持っています。
プラズマダッシュモーターは回転数が25000~28000r/minという驚異的な数値を誇り、ミニ四駆用グレードアップパーツの中で最強クラスの速度を実現します。特にストレートコースでの加速力と最高速度は群を抜いています。
ウルトラダッシュモーターも同様に高い性能を持ち、回転数は24000~27500r/minに達します。銀カーボンブラシを採用することで高い耐久性も実現しており、スピード記録会などで圧倒的な結果を残すことができます。
しかし、これらの超高性能モーターにはデメリットもあります。まず最大の問題点は、タミヤ公認の公式レースでは使用が禁止されているという点です。あまりにも性能が高すぎるため、公平な競争のためにレギュレーションから除外されています。
また、高性能であるがゆえに扱いが難しく、初心者がいきなり使いこなすのは困難です。コーナリングが難しくなったり、電池の消費が早くなったりするデメリットもあります。コースアウトを覚悟の上で最速を目指す上級者向けのモーターと言えるでしょう。
公式戦で使用可能な最速モーターはスプリントダッシュモーター
タミヤの公認レースに出場したい方にとって重要なのは、レギュレーションに準拠したモーターを選ぶことです。公式戦で使用可能なモーターの中で最も速いのは、スプリントダッシュモーターです。
スプリントダッシュモーターの回転数は20700~27200r/minで、公式戦で使用可能なモーターの中ではトップクラスの性能を誇ります。ウルトラダッシュやプラズマダッシュには及ばないものの、十分な速さを持っています。
特に直線コースでの加速力に優れており、長いストレートがあるコースでは大きなアドバンテージとなります。ただし、トルクは1.3~1.8mN・mとやや控えめなので、上り坂の多いコースではパワー不足を感じる場合があります。
このモーターの消費電流は2.8~3.8Aと比較的高めで、長距離レースでは電池の持ちに注意が必要です。スプリントダッシュモーターは短距離で勝負が決まるレイアウト向きで、電池の消費を気にせず短時間で最高のパフォーマンスを発揮したい場合に最適です。
両軸モーターを使用するミニ四駆PROシリーズには、スプリントダッシュモーターに相当するモデルはなく、マッハダッシュモーターPROが最速モデルとなります。公式戦で使用可能な最速モーターを求めるなら、マシンの種類に合わせて選択する必要があります。
モーターの種類は片軸と両軸の2タイプに大別される

ミニ四駆のモーターは、大きく分けて「片軸モーター」と「両軸モーター」の2種類があります。これらは形状が異なるだけでなく、対応するマシンも異なるため、購入前に確認が必要です。
片軸モーターは、従来の「ミニ四駆」シリーズ向けのモーターです。駆動方法はプロペラシャフトを介して4輪へパワーを伝える四輪駆動方式で、昔ながらの伝統的な設計となっています。ウルトラダッシュモーターとプラズマダッシュモーター以外のすべてのモーターを公認レースで使用することができます。
一方、両軸モーターは「ミニ四駆PRO」シリーズ専用のモーターで、前輪と後輪の両方にダイレクトに回転を伝える構造となっています。一般的に「ダブルシャフトモーター」とも呼ばれ、名前に「PRO」が付いているのが特徴です。駆動効率の良さやダイナミックな走行感が大きなメリットです。
両タイプのモーターは互換性がないため、お持ちのマシンに合ったモーターを選ぶ必要があります。通常のミニ四駆マシンには片軸モーターを、ミニ四駆PROシリーズには両軸モーターを選びましょう。間違えて購入してしまうと使用できないので注意が必要です。
なお、両方のタイプで同等のモデルラインナップが揃っているわけではなく、一部のモーターは片軸または両軸のみの展開となっています。例えば、ウルトラダッシュモーターやプラズマダッシュモーターは片軸のみ、マッハダッシュモーターは両軸のみの展開です。
チューン系とダッシュ系で異なる特性を持つ
ミニ四駆モーターは、「チューン系」と「ダッシュ系」という2つの大きなカテゴリーに分けられます。それぞれ特性が異なるため、用途に応じた選択が必要です。
【チューン系モーター】 チューン系モーターには、さらに3つのタイプがあります:
- バランスタイプ:アトミックチューン2モーター
- 高回転タイプ:レブチューン2モーター
- 高トルクタイプ:トルクチューン2モーター
チューン系の特徴は以下の通りです:
- 内部の接点が銅ブラシで構成されており、耐久性はやや低め
- 燃費が良く、比較的長時間の走行が可能
- 初心者でも扱いやすいバランスの取れた性能
- 公式戦でも使用可能
【ダッシュ系モーター】 ダッシュ系モーターは、より高い性能を求める方向けで、主に以下のモデルがあります:
- ライトダッシュモーター(バランス型)
- ハイパーダッシュモーター(バランス型の上位版)
- パワーダッシュモーター(パワー型・片軸のみ)
- スプリントダッシュモーター(高回転型・片軸のみ)
- ウルトラダッシュモーター(超高性能・公式戦不可・片軸のみ)
- プラズマダッシュモーター(最高性能・公式戦不可・片軸のみ)
- マッハダッシュモーターPRO(高性能・両軸のみ)
ダッシュ系の特徴は以下の通りです:
- 銀カーボンブラシが多く採用され、チューン系より耐久性が高い
- 高い回転数とトルクを実現
- 燃費はチューン系より悪く、電池の消費が早い
- 上級者向けの性能と扱いやすさ
一般的に、初心者にはチューン系モーターがおすすめで、特にアトミックチューン2モーターは扱いやすく、バランスの良い性能を持っています。競技志向の方やより高い性能を求める方はダッシュ系モーターを選ぶとよいでしょう。
モーターの性能は回転数とトルクで表される
ミニ四駆モーターの性能を理解する上で最も重要な2つの指標は「回転数」と「トルク」です。これらの値によってモーターの特性や適したコースタイプが決まります。
【回転数(RPM)】 回転数は、1分間あたりにモーターが何回転するかを示す値で、「r/min」で表示されます。この値が大きいほど、理論上の最高速度が高くなります。例えば:
- プラズマダッシュモーター:25000~28000r/min
- ウルトラダッシュモーター:24000~27500r/min
- スプリントダッシュモーター:20700~27200r/min
- パワーダッシュモーター:19900~23600r/min
- ハイパーダッシュ3モーター:17200~21200r/min
回転数が高いモーターは直線が多いコースや平坦なコースで真価を発揮します。特にロングストレートがあるコースでは、高回転タイプのモーターが有利です。
【トルク】 トルクは、モーターが発生させる回転力を示す値で、「mN・m(ミリ・ニュートン・メートル)」で表されます。この値が大きいほど、坂道での加速力や低速での駆動力が高くなります。例えば:
- トルクチューン2モーター:1.6~2.0mN・m
- パワーダッシュモーター:1.5~2.0mN・m
- プラズマダッシュモーター:1.4~1.9mN・m
- ハイパーダッシュ3モーター:1.4~1.9mN・m
- レブチューン2モーター:1.2~1.5mN・m
トルクが高いモーターは坂道の多いコースや、コーナーが連続するテクニカルなコースで力を発揮します。また、重量のあるマシンを動かす場合にも適しています。
実はモーターを選ぶ際に見落としがちな指標として「消費電流」もあります。これはモーターが消費する電力の量で、値が大きいほど電池の消費が早くなります。長距離レースでは消費電流の少ないモーターが有利になることもあります。
また、モーター本体の重量も性能の指標となることがあります。重いモーターは磁石が大きく、磁力が強い可能性が高いため、トルクが大きい傾向があります。
速さを決めるのはモーターだけでなくギア比との相性も重要
ミニ四駆の速さを追求する上で、モーターの性能だけでなく「ギア比」との相性も非常に重要です。適切なギア比の選択により、同じモーターでも大きく性能が変わります。
ギア比とは、マシンのタイヤが1回転する際に、モーターが何回転するかを表した数値です。例えば「3.5:1」という表記は、モーターが3.5回転するとタイヤが1回転することを意味します。この数値が小さいほど最高速度が上がり、大きいほど加速力が増します。
【ギア比の選び方の基本】
- トップスピードを重視する場合:高回転モーター+小さいギア比(例:3.5:1)
- 加速力やトルクを重視する場合:高トルクモーター+大きいギア比(例:5:1、8.75:1)
例えば、直線の多いコースでレブチューン2モーターを使用する場合は、3.5:1のギア比が適しています。一方、坂道の多いコースでトルクチューン2モーターを使用する場合は、5:1や8.75:1のギア比が適しているでしょう。
また、モーターの特性とギア比の組み合わせを工夫することで、モーターの弱点を補うことも可能です。例えば、回転数は高いが加速力に欠けるモーターには、やや大きめのギア比を組み合わせることで、バランスの取れた走行が可能になります。
タミヤの公式ページでは「ミニ四駆グレードアップパーツマッチングリスト」でギア比情報が公開されているので、参考にすると良いでしょう。適切なギア比の選択は、コースのレイアウトや自分のマシンの特性に合わせて調整することが重要です。
なお、ミニ四駆では走行中にギアの交換ができないため、事前に走行環境をイメージしながら、最適なギア比を選ぶことが勝利への鍵となります。

ミニ四駆のモーター別速さランキングと選び方のポイント
- 片軸モーターの速さランキングはプラズマダッシュが最強
- 両軸モーターではマッハダッシュモーターPROが最速
- コースタイプに応じたモーター選びが勝利のカギ
- モーターの慣らし方で性能に大きな差が出る
- 重量とモーター磁力の関係が性能を左右する
- 消費電流と持続性のバランスも考慮すべき
- まとめ:ミニ四駆で速いモーターは目的に応じて選ぼう
片軸モーターの速さランキングはプラズマダッシュが最強
片軸モーターの速さを客観的にランキングすると、プラズマダッシュモーターが最強の座に君臨します。以下に片軸モーターの速さランキングを回転数とトルクの観点から整理しました。
【片軸モーター速さランキング】
- プラズマダッシュモーター
- 回転数:25000~28000r/min
- トルク:1.4~1.9mN・m
- 特徴:最高クラスの速度、放熱性能に優れる、公式戦では使用不可
- ウルトラダッシュモーター
- 回転数:24000~27500r/min
- トルク:1.4~1.9mN・m
- 特徴:プラズマダッシュに次ぐ速さ、銀カーボンブラシで耐久性が高い、公式戦では使用不可
- スプリントダッシュモーター
- 回転数:20700~27200r/min
- トルク:1.3~1.8mN・m
- 特徴:公式戦で使用可能な中では最速、消費電流が大きい
- パワーダッシュモーター
- 回転数:19900~23600r/min
- トルク:1.5~2.0mN・m
- 特徴:高トルク・高回転のバランス型、あらゆるコース環境に対応可能
- ハイパーダッシュ3モーター
- 回転数:17200~21200r/min
- トルク:1.4~1.9mN・m
- 特徴:バランスの良い性能、ミニ四駆レーサーに最も人気がある
- ライトダッシュモーター
- 回転数:14600~17800r/min
- トルク:1.3~1.9mN・m
- 特徴:初心者でも扱いやすい、燃費が良い
- レブチューン2モーター
- 回転数:13400~15200r/min
- トルク:1.2~1.5mN・m
- 特徴:直線コースに強い、小径タイヤとの相性が良い
- アトミックチューン2モーター
- 回転数:12700~14900r/min
- トルク:1.5~1.8mN・m
- 特徴:トルクとスピードのバランスが良く初心者向け
- トルクチューン2モーター
- 回転数:12300~14700r/min
- トルク:1.6~2.0mN・m
- 特徴:パワー型で坂道やコーナーに強い
このランキングは回転数を基準にしていますが、実際のコースでの速さは使用する状況や設定によって変わってきます。例えば、坂道の多いコースではトルクチューン2モーターが活躍することもあります。
また、公式戦での使用を考えると、ウルトラダッシュモーターとプラズマダッシュモーターは除外され、スプリントダッシュモーターが最速の選択肢となります。初心者の方は、まずはアトミックチューン2モーターやライトダッシュモーターから始めて、徐々にステップアップしていくことをおすすめします。
両軸モーターではマッハダッシュモーターPROが最速
ミニ四駆PRO用の両軸モーターにも様々な種類があります。両軸モーターの中で最も速いのは、マッハダッシュモーターPROです。以下に両軸モーターの速さランキングをまとめました。
【両軸モーター速さランキング】
- マッハダッシュモーターPRO
- 回転数:20000~24500r/min
- トルク:1.3~1.8mN・m
- 特徴:両軸モーターの中で最速、片軸のパワーダッシュやスプリントダッシュに相当する性能
- ハイパーダッシュモーターPRO
- 回転数:17200~21200r/min(J-CUP 2021含む)
- トルク:1.4~1.9mN・m
- 特徴:バランスの良い性能、耐久性が高い
- ライトダッシュモーターPRO
- 回転数:14600~17800r/min
- トルク:1.3~1.9mN・m
- 特徴:燃費が良く、アルカリ乾電池でも快適に使用可能
- レブチューン2モーターPRO
- 回転数:13200~14900r/min
- トルク:1.2~1.5mN・m
- 特徴:ハイスピードコースと相性が良い、小径タイヤ向け
- アトミックチューン2モーターPRO
- 回転数:12700~14900r/min
- トルク:1.5~1.8mN・m
- 特徴:バランス型で扱いやすい
- トルクチューン2モーターPRO
- 回転数:12200~14400r/min
- トルク:1.7~2.1mN・m
- 特徴:パワー型で坂道やコーナーでも力を発揮
実走実験によると、同一条件下での3周タイムで以下のような結果が出ています:
- マッハダッシュモーターPRO:6.36秒
- ハイパーダッシュモーターPRO:6.60秒
- ライトダッシュモーターPRO:6.90秒
- トルクチューン2モーターPRO:7.25秒
- アトミックチューン2モーターPRO:7.35秒
- レブチューン2モーターPRO:7.91秒
これはフラットなコースでの結果であり、コースのレイアウトによって最適なモーターは変わります。例えば、坂道の多いコースではトルクチューン2モーターPROが好成績を残すこともあります。
特筆すべきは、両軸モーターにはウルトラダッシュモーターやプラズマダッシュモーターに相当する超高性能モデルが存在しないことです。ミニ四駆PRO用の最速モデルはマッハダッシュモーターPROとなり、公式戦でも使用可能です。
両軸モーターは前輪と後輪にダイレクトに動力を伝えるため、駆動効率が高く、ダイナミックな走りが楽しめます。速さだけでなく、走行感も選択基準の一つにすると良いでしょう。
コースタイプに応じたモーター選びが勝利のカギ

ミニ四駆で勝利を目指すなら、コースの特性に合わせたモーター選びが重要です。どんなに高性能なモーターでも、コースタイプとの相性が悪ければ思うような結果は得られません。以下にコースタイプ別の最適なモーター選択をご紹介します。
【直線の多いフラットなコース】
- 最適モーター:レブチューン2モーター、スプリントダッシュモーター、ウルトラダッシュモーター
- 選択理由:高回転型のモーターが最高速度を発揮できる
- 推奨ギア比:3.5:1(最高速重視)
- 注意点:コーナーリングが難しくなる可能性があるため、マシン全体のバランス調整が必要
【坂道の多いテクニカルコース】
- 最適モーター:トルクチューン2モーター、パワーダッシュモーター
- 選択理由:トルクが大きいモーターが上り坂でも力強い走りを実現
- 推奨ギア比:5:1、8.75:1(加速力重視)
- 注意点:最高速度はやや落ちるが、コース全体でのタイムが向上
【バランスの取れたコース】
- 最適モーター:アトミックチューン2モーター、ハイパーダッシュモーター、ライトダッシュモーター
- 選択理由:スピードとパワーのバランスが取れたモーターが安定した走りを実現
- 推奨ギア比:4:1(バランス重視)
- 注意点:コース全体を通して安定したパフォーマンスを発揮
【長距離レース】
- 最適モーター:チューン系モーター、ライトダッシュモーター
- 選択理由:燃費の良いモーターが電池の持ちを向上させる
- 推奨ギア比:電流消費を抑える設定
- 注意点:最高速度よりも持続性を重視
【公式戦向け】
- 最適モーター:スプリントダッシュモーター(片軸)、マッハダッシュモーターPRO(両軸)
- 選択理由:公式戦で使用可能な中で最高性能
- 注意点:ウルトラダッシュモーターとプラズマダッシュモーターは公式戦では使用不可
実際のコース走行では、モーターだけでなくマシン全体のセッティングと合わせて考える必要があります。例えば、重量のあるマシンではトルクの大きいモーターが有利ですし、軽量マシンでは高回転モーターとの相性が良くなります。
また、初心者の方は扱いやすさも重要な選択基準です。アトミックチューン2モーターやライトダッシュモーターは比較的扱いやすく、バランスの良い性能を持っているため、まずはこれらのモーターから始めることをおすすめします。
モーターの慣らし方で性能に大きな差が出る
モーターの選択だけでなく、その「慣らし方」も性能に大きく影響します。適切な慣らしを行うことで、同じモーターでも大きな性能差が生まれます。以下にモーター慣らしの効果と方法をご紹介します。
【モーター慣らしの効果】
- 内部パーツの摩擦抵抗を低減
- 回転数の向上
- トルクの安定化
- モーターの耐久性向上
【モーター慣らしの基本的な方法】
- 水慣らし
- 方法:水を入れた容器にモーターを入れて回転させる
- 効果:摩擦熱による焼き付きを防ぎながら内部を慣らす
- 時間:5~10分程度
- 注意点:完全に乾燥させてから使用する
- 無負荷慣らし
- 方法:電池を接続して空回しさせる
- 効果:内部の抵抗を均一化する
- 時間:3~5分程度
- 注意点:長時間の空回しはモーターに負担をかける
- 負荷慣らし
- 方法:ピニオンギアを付けた状態で回転させる
- 効果:実際の使用状態に近い条件で慣らす
- 時間:数回に分けて合計10分程度
- 注意点:熱くなりすぎないよう注意
注意しなければならないのは、モーター慣らしに関するケミカル製品の使用です。一部のユーザーは専用のモーター慣らしオイルなどを使用していますが、これらの使用は公式戦のレギュレーションでグレーゾーンとなる場合があります。タミヤは「メンテナンスのためのモーター注油はOK」としていますが、過度な使用は避けるべきでしょう。
また、モーターの個体差も性能に影響します。同じモデルでも個体によって回転数や消費電流に差があることがあります。例えば、回転数は同じでも消費電流が多いモーターは、磁力が強くトルクが大きい可能性があります。このような「当たりモーター」を見つけるには、複数のモーターを比較することも一つの方法です。
モーター慣らしは一度で完了するものではなく、複数回の走行を通じて徐々に性能が安定していきます。公式戦に参加する前には、十分に慣らしたモーターを使用することをおすすめします。
重量とモーター磁力の関係が性能を左右する
モーターの性能を評価する上で見落とされがちな要素として、モーターの「重量」があります。実は重量はモーターの磁力と深い関係があり、性能に大きく影響するのです。
【重量と磁力の関係】 モーターの部品は基本的に同じ素材で作られているため、重量差は主に磁石の大きさによって生じます。磁石が大きく重いほど、磁力が強くなる傾向があります。
磁力の強いモーターには以下のような特徴があります:
- トルクが大きい(加速力が高い)
- 回転数がやや低い傾向がある
- 消費電流が多い
同じ型番のモーターでも、重量が0.1g異なるだけで性能に差が出ることがあります。実験によると、同じハイパーダッシュモーターで重量の重いモーターのほうが、同じ回転数でも実際の走行速度が速いという結果が出ています。
【実験例】
- モーター1:29500rpm、消費電流0.68A、軽い
- モーター2:29500rpm、消費電流0.95A、重い(+0.1g)
走行テストの結果、重いモーター2のほうが明らかに速く走行しました。これは回転数だけでは判断できない「力強さ」の違いです。
【磁力を間接的に確認する方法】
- 重量測定:精密なスケールで測定(0.01g単位)
- 消費電流測定:モーター慣らし器や充電器の「Thunder」などで確認
- 磁石の物理的な大きさ確認:分解できない場合は難しい
ただし注意点として、消費電流が多すぎるモーター(1.3A以上など)は却って遅くなる場合もあります。適度なバランスが重要です。
また、磁力の強いモーターは電池の消費も早くなります。短距離レースには向いていますが、長距離レースでは電池切れのリスクが高まります。ジャパンカップのような長いコースを電池交換なしで走る場合は、消費電流が少なめで省電力高回転のモーターを選ぶと良いでしょう。
モーター選びでは、単に回転数だけでなく、重量と消費電流も考慮して総合的に判断することが重要です。「速いモーター」と「強いモーター」は必ずしも一致しないことを理解しておきましょう。
消費電流と持続性のバランスも考慮すべき
モーターの速さを追求する上で、「消費電流」と「持続性」のバランスも重要な検討事項です。最速のモーターが常に最適とは限らず、レースの特性に合わせた選択が必要です。
【消費電流と持続性の関係】
- 高消費電流モーター:パワフルだが電池の消費が早い
- 低消費電流モーター:パワーはやや劣るが電池が長持ちする
モーターの消費電流は一般的に以下の範囲に収まります:
- ダッシュ系モーター:0.50~1.40A
- チューン系モーター:それ以下の場合が多い
同じ回転数(例:28000rpm)でも、消費電流が違うモーターでは性能が異なります:
- 消費電流0.8A:トルクがやや弱い
- 消費電流1.0A:トルクが強く実走速度が速い
【レースタイプ別のモーター選択基準】
- 短距離レース
- 最適モーター:高消費電流のパワフルなモーター
- 理由:電池の持ちよりもパワーと速度を重視
- 例:プラズマダッシュ、ウルトラダッシュ、マッハダッシュPRO
- 長距離レース
- 最適モーター:低~中消費電流の持続型モーター
- 理由:レース終盤まで安定した出力を維持
- 例:ハイパーダッシュ(低電流タイプ)、ライトダッシュ、アトミックチューン2
- ジャパンカップなどの公式大会
- 最適モーター:中消費電流で公式戦使用可能なモーター
- 理由:レギュレーション適合と持続性のバランス
- 例:ハイパーダッシュ3(0.56A程度)
【消費電流を抑える工夫】
- ギア比の調整:大きめのギア比にすると電流消費が抑えられる場合も
- ブラシ圧の最適化:過度に強い圧力は電流消費増加の原因に
- 慣らしの最適化:適切な慣らしで摩擦を減らし電流消費を抑制
実際のレース戦略では、予選と決勝で異なるモーターを使い分けることも有効です。予選では燃費を気にせず最速モーターで予選通過を狙い、決勝では持続性のあるモーターで安定した走りを目指す戦略も考えられます。
初心者の方は、まずは持続性のあるモーターから始めることをおすすめします。極端に電流消費の多いモーターは扱いが難しく、電池の消費も早いため、レース中に急激に速度が落ちるリスクがあります。経験を積みながら、徐々にパワフルなモーターにステップアップしていくのが良いでしょう。

まとめ:ミニ四駆で速いモーターは目的に応じて選ぼう
ミニ四駆の世界で「速いモーター」を極めるには、単に高回転・高トルクのモデルを選ぶだけでは不十分です。コースタイプ、マシン特性、レース形式など、様々な要素を考慮した総合的な選択が重要となります。
最後に記事のポイントをまとめます。
- 絶対的な速さを求めるなら、プラズマダッシュモーターとウルトラダッシュモーターが最強だが公式戦では使用不可
- 公式戦で使える最速モーターは片軸ならスプリントダッシュモーター、両軸ならマッハダッシュモーターPRO
- モーターは片軸と両軸の2種類があり、それぞれ通常のミニ四駆とミニ四駆PRO用に分かれている
- チューン系モーターは扱いやすく燃費が良い、ダッシュ系モーターはパワフルだが電池消費が早い
- モーターの性能は回転数(スピード)とトルク(パワー)の2指標で評価される
- 同じ回転数でも消費電流や重量(磁力)の違いで実際の走行速度に差が出る
- コースタイプに合わせたモーター選択が重要(直線コースは高回転型、坂道コースは高トルク型)
- ギア比との組み合わせでモーターの特性を最大限に活かせる
- モーターの慣らしで同じモデルでも性能に大きな差が出る
- 短距離レースではパワー重視、長距離レースでは持続性重視のモーター選択が有効
- 初心者はアトミックチューン2モーターやライトダッシュモーターから始めると扱いやすい
- モーターの「速さ」だけでなく「強さ」も考慮した総合的な選択が勝利への鍵