ミニ四駆レースで勝つためには、マシンのカスタマイズが欠かせません。特にコース上のジャンプや段差での衝撃を吸収する「フロント提灯」は、安定走行のために多くのレーサーが取り入れている改造パーツです。しかし、市販品は高価なものが多く、自作することでコストを抑えながら自分のマシンに最適な提灯を作ることができます。
本記事では、VZ、MA、MS、FM-Aなど様々なシャーシに対応したフロント提灯の作り方を詳しく解説します。必要な材料や工具から、パーツの加工方法、組み立て手順、取り付け方まで、初心者でも失敗しない完全ガイドをお届けします。これを読めば、あなたも明日からフロント提灯マスターになれるはずです!
記事のポイント!
- フロント提灯の役割と効果について理解できる
- シャーシごとに最適なフロント提灯の選び方がわかる
- 入手しやすい材料で自作する方法をステップバイステップで学べる
- リフターやマスダンパーとの組み合わせで性能を最大化する方法を知れる

ミニ四駆フロント提灯とは何かとその効果
- フロント提灯は衝撃吸収のためのギミック
- フロント提灯の種類と進化の歴史
- シャーシ別に適したフロント提灯の選び方
- フロント提灯の効果を最大化する取り付け位置
- リフターと組み合わせることでさらに性能アップ
- 公式大会でのフロント提灯使用は規則に注意
フロント提灯は衝撃吸収のためのギミック
ミニ四駆の「フロント提灯」は、マシン前部に取り付けられる可動式のパーツで、主にジャンプや段差でのマシンの衝撃を吸収するためのギミックです。名前の由来は、その動きが提灯が揺れる様子に似ていることからきています。
フロント提灯の主な役割は、レース中にコースの段差やジャンプからの着地時に発生する衝撃を緩和することです。この衝撃緩和によって、マシンの姿勢が安定し、コースアウトのリスクを減らすことができます。特に高速走行時やテクニカルなコースでは、提灯の有無がレース結果を大きく左右することも珍しくありません。
多くの大会入賞マシンがフロント提灯を搭載していることからも、その効果の高さがうかがえます。無加工マシンのレギュレーションが増えている近年でも、オープンクラスでは提灯は必須のカスタマイズと言えるでしょう。
独自調査の結果、フロント提灯を装着することで、特に下りジャンプや段差の多いコースでの走行安定性が向上することがわかっています。マシンがバウンドする(跳ね返る)現象を抑え、タイヤの接地性を高めることで、コーナリング性能も向上します。
また、単なる衝撃吸収だけでなく、提灯の動きによってマシンの重心移動をコントロールする効果もあります。適切に設計された提灯は、マシンの重心を低く保ちながら、必要なときに上下動を許容するという絶妙なバランスを実現します。
フロント提灯の種類と進化の歴史
ミニ四駆のフロント提灯は、長い歴史の中で様々な形態に進化してきました。初期のものから現代の洗練されたものまで、その変遷を見ていきましょう。
最初期の提灯は「ヒクオ」や「ノリオ」と呼ばれる原始的な形態でした。これらは単純な構造ながら、衝撃吸収の基本的な機能を果たしていました。その後、レーサーたちの改良によって、より効率的でスマートな設計へと進化していきました。
主な提灯の種類としては、取り付け位置や構造によって以下のように分類できます:
- 正転片軸用(S2、VS、VZ、AR等):シャーシの内側を通るタイプで、トレッドが狭くても干渉しない利点があります
- FM用:モーターが前にあるシャーシ向けで、アームが下に配置され重心を下げます
- バンパーベース取り付け基部用:シャーシを選ばない汎用性が高いタイプです
- 両軸用(MS、MA):軽量で、トレッドを狭くしても稼働します
それぞれの提灯タイプには、メリットとデメリットがあります。例えば、内通し提灯は重心を低くできる反面、やや重くなる傾向があります。一方、バンパーベース取り付けタイプは軽量ですが、衝撃相殺能力はやや低めです。
年々、提灯の設計は洗練され、使用材料も進化しています。初期はプラスチック製のパーツが主流でしたが、現在ではFRPやカーボン製の軽量かつ強固な材料が使われることが多くなっています。特にカーボン素材の登場により、強度を保ちながら極限まで軽量化された提灯が実現しました。
また、提灯の動きをコントロールするためのリフターや、重りとなるマスダンパーとの組み合わせなど、システム全体として進化を遂げています。この進化は今もなお続いており、レーサー達の創意工夫によって新しい形の提灯が生み出され続けています。
シャーシ別に適したフロント提灯の選び方

ミニ四駆のシャーシによって、最適なフロント提灯の形状や取り付け方法は大きく異なります。ここでは主要なシャーシ別に適した提灯の選び方をご紹介します。
VZシャーシの場合: VZシャーシはフロントギヤカバーの出っ張りが提灯の可動を妨げる可能性があるため、特別な加工が必要です。標準のフロントバンパーに提灯を取り付けることは可能ですが、ビス穴の位置が前側(フロント側)にあるため、提灯がギヤカバーに接触してしまい、可動域が制限されることがあります。そのため、ビス穴の位置が前に寄りすぎない設計のフロントバンパーを使用するか、提灯側を適切に加工することが重要です。
MAシャーシの場合: MAシャーシは両軸用の提灯が相性良好です。特徴として、トレッドを限界まで狭くしても稼働する設計が可能で、アームを内側に向けることでコンパクトに収めることができます。また、MAシャーシはビスの前後の位置が多少変わっても加工方法にほぼ影響がないため、比較的作りやすいと言えるでしょう。
MSシャーシの場合: MSシャーシもMAシャーシと同様に両軸用の提灯が適していますが、MSフレキ加工をしている場合は特に注意が必要です。ロックナットを固定するビスの余長部分が提灯と干渉する可能性があるため、ビスの長さ調整が必要になることがあります。また、MSシャーシの標準フロントバンパーはビス穴が提灯と適合しないため、別途FRPステーなどを取り付ける必要があります。
FM-Aシャーシの場合: FM-Aシャーシはモーターが前についているという特殊な構造のため、専用の提灯アームが必要です。シャーシとホイールの間が非常に狭いので、組継ぎして作る必要があります。カーボン素材を使用して先端を細くすることで、限られたスペースでも機能する提灯を作ることができます。
どのシャーシを使う場合でも、提灯を作る前に、実際のマシンでスラスト角なども含めてフロント部分の加工を完了させておくことをおすすめします。実際のマシンの状態を確認しながら提灯を作ることで、後から調整に困ることを避けられます。シャーシの特性を理解し、それに合った提灯を選ぶことが、最高のパフォーマンスを引き出す鍵となります。
フロント提灯の効果を最大化する取り付け位置
フロント提灯の効果を最大限に引き出すためには、取り付け位置が非常に重要です。最適な位置を見つけるためのポイントをご紹介します。
まず、提灯の支柱となるビスの位置がフロント提灯の性能を大きく左右します。多くの場合、フロントATバンパーのビス穴を利用しますが、このビス穴の前後の位置によって提灯の挙動が変わってきます。ビス穴が前に寄りすぎると、提灯がシャーシやギヤカバーと干渉してしまい、可動域が制限される恐れがあります。逆に、後ろに寄りすぎると、提灯の効果が十分に発揮されない可能性があります。
理想的な取り付け位置としては、提灯がマシンのシャーシを直接叩くように設計することがポイントです。例えば、FM-Aシャーシの場合、電池カバーを叩くよりも、シャーシのサイド縁を叩く方が効果的とされています。これにより、衝撃がよりダイレクトにシャーシに伝わり、効率的に吸収されます。
また、スラスト角との関係も見逃せません。スラスト角を付けたフロントバンパーに提灯を取り付ける場合、そのスラスト角に合わせた提灯の設計が必要です。例えば、約5度のスラスト角を付けたフロントATバンパーに提灯を取り付ける場合、その角度に適応した提灯を作成する必要があります。
提灯の可動域も重要な要素です。可動域が狭すぎると衝撃吸収効果が限定的になり、広すぎるとボディが前にバターンと倒れてしまうことがあります。適切な可動域を確保するためには、ビス穴の斜め拡張が効果的です。ドリル刃を使って穴を斜めに拡張することで、提灯の動きが滑らかになり、理想的な可動域を実現できます。
最終的には、実際にマシンに取り付けて、提灯がシャーシと干渉していないか、想定した可動域が確保できているかを確認することが大切です。問題があれば、干渉部分を特定し、再度加工して調整する必要があります。こうした微調整を繰り返すことで、最高のパフォーマンスを引き出すフロント提灯の取り付けが実現します。
リフターと組み合わせることでさらに性能アップ
フロント提灯だけでも十分な効果がありますが、「リフター」と組み合わせることで、その性能をさらに向上させることができます。リフターとは、提灯を上方向に持ち上げる力を加えるためのパーツです。
リフターには主に2種類あります。1つ目は「ゴムリング」を使ったタイプで、もう1つは「クリヤーパーツ」を使ったタイプです。どちらも提灯に上向きの力を加えることで、提灯の動きをコントロールする役割を果たします。
ゴムリングを使ったリフターは、比較的簡単に作ることができます。フロントATバンパーのビスにゴムリングを引っ掛け、そのゴムリングをフロント提灯側にも引っ掛けることで、提灯に上向きの張力を与えます。このゴムリングの張力によって、提灯が自然と上方向に引き上げられ、ジャンプ後の着地時には瞬時に元の位置に戻るようになります。
ゴムリングのテンションを調整することで、リフターの強さをコントロールできます。強めのリフター(スパッと上がる)にしたい場合はゴムリングをしっかり張り、弱いリフター(ふわっとした挙動)にしたい場合は大きく伸ばしておくと良いでしょう。コースの特性やマシンの走行スタイルに合わせて、最適な強さに調整することが重要です。
一方、クリヤーパーツを使ったリフターは、より精密な調整が可能です。クリヤーパーツの形状や厚みを変えることで、リフターの強さや特性を細かく調整できます。ただし、作成に手間がかかる点がデメリットと言えるでしょう。
リフターを組み合わせることの大きなメリットは、提灯の「戻り」をコントロールできる点にあります。リフターがない状態では、提灯は自重で下がるだけですが、リフターを付けることで、積極的に上方向に引き上げる力が加わります。これにより、ジャンプ後の着地時や段差通過後に、素早く提灯が元の位置に戻り、次の衝撃に備えることができます。
コースの特性に合わせたリフターの調整も重要です。ジャンプが多いコースでは強めのリフターが効果的ですが、平坦なコースでは弱めのリフターの方が安定走行に繋がることもあります。様々な設定を試して、自分のマシンに最適なリフターを見つけることをおすすめします。
公式大会でのフロント提灯使用は規則に注意
ミニ四駆の公式大会でフロント提灯を使用する際は、競技規則に注意する必要があります。規則を守らないと、せっかく作った提灯も使用できなくなる可能性があります。
最も重要なのは、ボディの装着が必須というルールです。ミニ四駆公認の競技会規則では、ボディを装着していない状態でのレース参加は認められていません。つまり、フロント提灯を付けただけの「むき出し」の状態では、公式大会に参加することができないのです。
フロント提灯とボディを組み合わせる際は、クリヤーボディ(ポリカボディ)が相性良好です。クリヤーボディは軽量で、提灯の動きを妨げにくい特性があります。ボディをフロント提灯に固定する方法としては、余った穴のどこかに適当な長めのビスを挿し、そのビスにボディをはめてゴム管等で固定するという方法が一般的です。
また、公式大会によっては、使用できるパーツや加工方法に制限がある場合があります。例えば、「無加工マシンのレギュレーション」のような特定のルールが設けられている大会では、フロント提灯の使用自体が制限される可能性もあります。参加する大会のレギュレーションを事前に確認しておくことが重要です。
さらに、提灯の設計によっては、ボディが前に倒れやすくなることがあります。特に可動域が広すぎる提灯の場合、走行中にボディが前にバターンとひっくり返ることもあります。そのため、ボディが前に倒れずに適切な角度で止まる構造にしておくことが大切です。
最後に、フロント提灯はあくまでもマシンの性能を向上させるための一要素です。提灯を付けるだけで全てが解決するわけではなく、シャーシの選択や他のパーツとのバランスも考慮する必要があります。自分のマシン作りに合った提灯を選び、全体のバランスを整えることで、競技会でも最高のパフォーマンスを発揮できるでしょう。

ミニ四駆フロント提灯の作り方と材料選び
- フロント提灯作りに必要な材料と工具一覧
- VZシャーシ向けフロント提灯の作り方はステーの加工がポイント
- MAシャーシとMSシャーシでは加工方法が若干異なる
- FM-Aシャーシ専用の提灯アームの作り方
- 提灯の動きを良くするビス穴の斜め拡張方法
- マスダンパーの取り付けで重量調整が可能
- まとめ:ミニ四駆フロント提灯は自作で性能アップの第一歩
フロント提灯作りに必要な材料と工具一覧
フロント提灯を自作するためには、適切な材料と工具を揃えることが大切です。ここでは、基本的な材料と工具をリストアップしていきます。
必要な材料(パーツ):
- カーボンマルチワイドステー – 前部パーツの骨格となる部分
- シャーシ別の後部パーツ
- VZ・MAシャーシ用: スーパーXシャーシ・FRPリヤローラーステーなど
- MSシャーシ用: VZシャーシFRPフロントワイドステーなど
- 皿ビス(6mm) – パーツの結合用
- ロックナット – 結合パーツの固定
- マスダンパー – 重量調整用
- 鍋ビス – マスダンパー取り付け用
- ナット – マスダンパー固定用
- ゴムリング – リフター用(オプション)
これらのパーツは比較的入手しやすいものばかりで、タミヤの公式ショップやホビーショップで購入することができます。特に初心者の方は、まずは基本セットから始めて、徐々に自分好みにカスタマイズしていくのがおすすめです。
必要な工具:
- リューター(電動工具)- パーツの加工に必須
- ダイヤモンドカッター – カーボンやFRPのカット用
- 皿ビス加工用ビット – ビス穴の加工用
- 円筒形ビット – 形状整形用
- 2mmドリル刃 – ビス穴の拡張用
- 精密ピンデバイス – 手動でドリル刃を回すための工具(推奨)
- ニッパー – パーツのカット用
- プラスドライバー – ビス締め用
- ボックスドライバー – ロックナット固定用
- 簡易スパナ – ナット締め用
- マルチテープ – カットラインの目印用(オプション)
これらの工具はすべて揃える必要はなく、代用できるものもあります。例えば、リューターがない場合は、ニッパーとヤスリでも基本的な加工は可能です。ただし、リューターがあると作業効率が格段に上がるので、長期的にミニ四駆を楽しむ予定なら投資する価値はあるでしょう。
また、工具選びで重要なのは自分の技術レベルに合ったものを選ぶことです。例えば、ドリル刃を使った加工に慣れていない方は、電動よりも手動で回せる精密ピンデバイスの方が削りすぎるリスクを減らせます。
材料や工具を揃える際は、将来的な拡張性も考慮すると良いでしょう。基本的なものから始めて、必要に応じて専門的なものを追加していくアプローチが、コスト面でも効率的です。これらのアイテムを揃えれば、基本的なフロント提灯の自作に挑戦することができます。
VZシャーシ向けフロント提灯の作り方はステーの加工がポイント
VZシャーシ向けのフロント提灯を作る際、最も重要なのはステーの適切な加工です。VZシャーシ特有のフロントギヤカバーとの干渉を回避するための工夫が必要になります。
まず、VZシャーシ用の前部パーツとしてカーボンマルチワイドステーを用意します。このステーに対して、大きく分けて「皿ビス加工」「シャーシとの干渉箇所のカット」「ビス穴の拡張」という3つの加工を行います。
最初に行うべきは皿ビス加工です。マルチステーの裏面(ロゴがない面)の特定のビス穴に、リューターの皿ビス加工用ビットを使って加工します。この加工を先に行っておくことで、次の工程で重要な箇所を削りすぎるリスクを減らせます。
次に、シャーシとの干渉箇所のカットです。VZシャーシの場合、特に右側のフロントギヤカバーの出っ張りが提灯の可動を妨げる要因となります。この干渉を回避するために、マルチステーをカットラインに沿って加工します。
カット作業にはリューターのダイヤモンドカッターが効果的です。カットラインが不明確な場合は、マルチテープを貼って目印とすると作業がしやすくなります。カット作業の順序としては、まず上部と下部から始め、中央部分は特に注意しながら削っていきます。100円ショップのダイヤモンドカッターを使用する場合は、表面から一気に切断せず、まずは溝を作るイメージで慎重に削るのがコツです。
カット後の仕上げには円筒形ビットを使用します。特に皿ビス加工したビス穴付近は、皿ビス加工跡に干渉しないよう裏面を確認しながら削る必要があります。最初は直径の大きいビットで荒削りし、細かい部分は小さいビットに変えると形を整えやすくなります。
最後に行うのがビス穴の拡張です。フロント提灯の可動性を確保するために、特定のビス穴を斜めに拡張します。この作業には2mmドリル刃を使用し、実際の提灯の可動を想定して、マルチステーを斜めにした状態でドリル刃を回します。どの角度まで傾けるかで提灯の最大可動域が変わるので、自分が望む可動範囲に合わせて調整しましょう。
VZシャーシ用の提灯作りでは、特にギヤカバーとの干渉に注意を払う必要があります。フロントバンパーにセットして加工具合を確認しながら作業を進めることで、最適な形状に仕上げることができます。これらの加工を丁寧に行うことで、VZシャーシに最適なフロント提灯が完成します。
MAシャーシとMSシャーシでは加工方法が若干異なる

MAシャーシとMSシャーシ向けのフロント提灯は、VZシャーシ用と比較すると加工方法に若干の違いがあります。それぞれのシャーシの特性に合わせた適切な加工が重要です。
MAシャーシ向けの加工: MAシャーシ用の前部パーツもVZシャーシと同じくカーボンマルチワイドステーを使用しますが、加工内容が異なります。基本的な加工工程は「皿ビス加工」「シャーシとの干渉箇所のカット」「ビス穴の拡張」の3つです。
MAシャーシの場合、VZシャーシほどギヤカバーとの干渉を考慮する必要がないため、カット形状はより単純になります。カットラインに沿って両サイドを削り、形を整えていく作業が中心です。また、MAシャーシはビスの前後の位置が多少変わっても加工方法にほぼ影響がないため、作業の自由度が高いと言えます。
MAシャーシ用の後部パーツには、スーパーXシャーシ・FRPリヤローラーステーなどを使用します。この後部パーツは必要最低限の加工でも問題ありませんが、よりスマートな形状や軽量化を目指す場合は追加の加工も可能です。
MSシャーシ向けの加工: MSシャーシ向けの提灯も基本的な加工工程は同じですが、MSシャーシ特有の構造に合わせた調整が必要です。特に注意すべきは、MSシャーシのギヤカバーが提灯と干渉する可能性がある点です。
MSシャーシ用の後部パーツには、VZシャーシFRPフロントワイドステーが適しています。このステーを選んだ理由は、MSシャーシのギヤカバーとの干渉を回避するのに最適な構造を持っているためです。ただし、支柱ビスの前後の位置が異なる場合は、適切なステーも変わってくる点に注意が必要です。
最適なステーを選ぶ方法として、スーパーXシャーシ・FRPリヤローラーステーを指標として使う方法があります。このステーとMAシャーシ用の前部パーツを結合し、MSシャーシにセットしてどの部分が干渉するかを確認します。後ろ側が干渉する場合はVZシャーシFRPフロントワイドステー、前側が干渉する場合はカーボンリヤワイドステーが適しています。
また、MSシャーシでMSフレキ加工をしている場合、ロックナットを固定するビスの余長がフロント提灯と干渉することがあります。この問題は、ビスを適切な長さに加工することで解決できます。
MAシャーシとMSシャーシ向けの提灯作りでは、それぞれのシャーシの特性を理解し、適切な加工を施すことが大切です。特にMSシャーシでは、ギヤカバーとの干渉や、MSフレキ加工時の特有の問題に対応することで、最適な提灯を作ることができます。
FM-Aシャーシ専用の提灯アームの作り方
FM-Aシャーシは、モーターが前に配置されるという特殊な構造を持つため、専用の提灯アームを作る必要があります。ここでは、FM-Aシャーシに最適な提灯アームの作り方を解説します。
FM-Aシャーシの最大の特徴は、フロント部分にモーターが配置されていることです。このため、他のシャーシで使用される通常の提灯構造では適合しません。また、シャーシとホイールの間が非常に狭いという制約もあります。このような条件下で機能する提灯アームを作るためには、組継ぎという技法を使用します。
まず、材料選びが重要です。FM-Aシャーシ用の提灯アームには、カーボン素材を使用することをおすすめします。フロント部分が非常に狭いため、先端がかなり細くなる構造になります。FRPでも製作可能ですが、強度の観点からカーボン素材の方が優れています。
作成手順としては、まずカーボン素材をカットして、組継ぐための切れ込みを入れていきます。切れ込みを入れる際は、少しずつ削り、何度も組み合わせて確認しながら作業を進めるのがコツです。「少しキツイかな?」くらいでも問題ありません。
次に、仮組みして形を整えます。組継ぎ部分の接着には強力な瞬間接着剤を使用します。接着剤を流し入れる際は、隙間なくしっかりと浸透させることが重要です。また、余った端材は捨てずに取っておくことをおすすめします。将来的に別のパーツ作りに役立つことがあります。
提灯アームが完成したら、動きの硬さや可動性をチェックします。FM-Aシャーシの場合、電池カバーをアームが叩くよりも、シャーシのサイドの縁を叩く方が効果的とされています。これを実現するために、ビスを通してサイドの縁を叩くような設計にします。また、ビスの通る部分にはハトメを入れることで、耐久性を高めることができます。
FM-Aシャーシ用の提灯アームは、その特殊な構造ゆえに作成が少し難しいかもしれませんが、一度マスターすれば他のシャーシ用の提灯作りにも応用できる技術が身につきます。特に組継ぎという技法は、様々なカスタムパーツ作りに活用できる便利なスキルです。
最終的には、実際にマシンに取り付けて動作確認をし、必要に応じて調整を加えることが大切です。FM-Aシャーシの特性を活かした提灯アームを作ることで、コース上での安定性が大きく向上するでしょう。
提灯の動きを良くするビス穴の斜め拡張方法
フロント提灯の性能を左右する重要な工程の一つが、ビス穴の斜め拡張です。この作業を適切に行うことで、提灯の動きがスムーズになり、効果的な衝撃吸収が実現します。
ビス穴の拡張が必要な理由は、標準のビス穴では提灯がほとんど可動しないためです。提灯の前部パーツ(マルチステーなど)には既存のビス穴がありますが、これをそのまま使うと、シャーシに取り付けることはできても、上下の動きがほとんど生まれません。提灯としての機能を発揮させるためには、このビス穴を斜めに拡張して可動域を確保する必要があります。
斜め拡張作業には、2mmドリル刃を使用します。電動ドリルでも可能ですが、特に初心者の方は精密ピンデバイスなどの手動で回せる工具を使うことをおすすめします。電動工具は作業が速い反面、削りすぎてしまうリスクがあるからです。
拡張方法は以下の通りです:
- 実際の提灯の可動を想定し、マルチステーを斜めにした状態にします
- その角度を保ちながら、ドリル刃をビス穴に挿入して回します
- 少しずつ削りながら、定期的に可動チェックを行います
- 希望の可動域が得られるまで、この作業を繰り返します
重要なポイントは、どの角度まで斜めに拡張するかということです。これによって提灯の最大可動域が決まります。あまり角度をつけすぎると、提灯が不安定になったり、ボディが前に倒れすぎたりする原因になります。逆に角度が足りないと、十分な衝撃吸収効果が得られません。
マルチステーだけの状態では、どの方向に、どの程度傾ければ良いのか判断しにくいことがあります。そのような場合は、いったん提灯の骨格を組み立ててから、実際の可動方向を確認した上で穴の拡張を行うとよいでしょう。これにより、より適切な角度での拡張が可能になります。
また、左右のビス穴は同じ角度で拡張することが望ましいです。左右で角度が異なると、提灯の動きにムラが生じ、効果的な衝撃吸収ができなくなります。左右均等に拡張するためには、一方のビス穴を拡張した後、同じ角度でもう一方も拡張するよう心がけましょう。
ビス穴の斜め拡張は、フロント提灯作りの中でも特に繊細な作業の一つですが、この工程をしっかりと行うことで、提灯の動きが格段に良くなります。時間をかけて丁寧に作業することで、理想的な提灯の動きを実現しましょう。
マスダンパーの取り付けで重量調整が可能
フロント提灯の仕上げとして重要なのが、マスダンパーの取り付けです。マスダンパーは単なる重りではなく、提灯の動きを調整する重要な役割を果たします。適切なマスダンパーの選択と取り付け方法を知ることで、マシンの性能を最適化できます。
マスダンパーとは、提灯の前端部分に取り付ける重りのことで、主に以下の効果があります:
- 提灯の重量増加による衝撃吸収力の向上
- 前輪の接地性の向上
- マシン全体の重心位置の調整
- 提灯の動きの安定化
マスダンパーの取り付け位置は、フロント提灯の骨格の前端部、特定のビス穴を利用します。取り付けには鍋ビスを使い、マスダンパーとナットを取り付けた後、提灯の裏面からビスを通し、上からロックナットで固定します。
重要なのは、ビスの先端部分が地上高1mm以上を確保できるよう調整することです。これが低すぎると、コース走行中に地面に接触してしまい、マシンの走行を妨げる原因になります。ナットとロックナットの位置を調整することで、適切な高さに設定できます。
マスダンパーの重さと形状は、マシンのバランスやコースの特性に合わせて選択することが大切です。例えば:
- 軽いマスダンパー:提灯の動きが軽快になり、急なコーナリングに有利
- 重いマスダンパー:衝撃吸収力が増し、ジャンプの多いコースに有利
- 先端が細いマスダンパー:空気抵抗が少なく、高速コースに適している
- 幅広のマスダンパー:安定性が増し、テクニカルなコースに向いている
また、マスダンパーの固定方法も重要です。ナットを締める際は、ロックナットをボックスドライバーで固定し、簡易スパナでナットを締めるとしっかりと固定できます。固定が緩いと走行中にマスダンパーが外れる危険があるので、しっかりと固定しましょう。
さらに、複数のマスダンパーを用意しておくことで、レース当日のコース状況に合わせた微調整が可能になります。例えば、予選と決勝でコースレイアウトが変わる場合、それぞれに最適なマスダンパーに交換することで、より高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。
マスダンパーはフロント提灯の一部ではありますが、マシン全体のバランスに関わる重要なパーツです。様々な重さや形状のものを試し、自分のマシンとコースに最適なマスダンパーを見つけることで、走行性能を大きく向上させることができます。

まとめ:ミニ四駆フロント提灯は自作で性能アップの第一歩
最後に記事のポイントをまとめます。
記事で紹介したことの振り返りまとめ:
- フロント提灯はジャンプや段差での衝撃を吸収し、マシンの安定性を向上させるギミック
- シャーシの種類によって最適なフロント提灯の形状や取り付け方法が異なる
- 入手しやすいパーツで自作することで、コストを抑えながら自分のマシンに最適な提灯が作れる
- VZシャーシ用の提灯はフロントギヤカバーとの干渉を避ける加工がポイント
- MAシャーシとMSシャーシでは加工方法に若干の違いがあり、それぞれの特性に合わせた調整が必要
- FM-Aシャーシはモーターが前にあるため、組継ぎ技法を使った専用アームが必要
- ビス穴の斜め拡張は提灯の可動性を左右する重要な工程
- リフターと組み合わせることで、提灯の性能がさらに向上する
- マスダンパーの選択と取り付けで、マシンのバランスと性能を最適化できる
- 公式大会では必ずボディを装着する必要があり、クリヤーボディが提灯との相性が良い
- シャーシの特性やコースの状況に合わせた提灯設計が、最高のパフォーマンスを引き出す鍵
- フロント提灯は単体では効果が限定的で、シャーシ選びや他のパーツとのバランスも重要