ミニ四駆の改造で近年注目を集めているのが「フロントATスラダン」です。スライドダンパーとATバンパーの機能を組み合わせたこのギミックは、コースアウトを劇的に減らし、マシンの安定性を飛躍的に向上させることができます。
複雑なセクションが増えた現代のミニ四駆コースでは、単なるスライドダンパーだけでは対応しきれない場面が増えています。そこで登場したのがATスラダンです。横からの衝撃を吸収しながら、コースの壁に乗り上げた際の復帰性能も兼ね備えた、まさに一石二鳥の改造といえるでしょう。
| この記事のポイント |
|---|
| ✓ フロントATスラダンの基本構造と効果が理解できる |
| ✓ 入手しやすいパーツでの作成方法がわかる |
| ✓ スラスト抜け対策の具体的な手法を学べる |
| ✓ シャーシ別の調整ポイントが把握できる |
ミニ四駆のフロントATスラダンで得られる効果と基本構造
- ATスラダンが現代ミニ四駆に必須な理由
- フロントATスラダンの構造を理解する
- 必要なパーツと工具の準備
ATスラダンが現代ミニ四駆に必須な理由
フロントATスラダンは、スライドダンパーとATバンパーの両方の機能を持つ複合ギミックです。この改造が注目される理由は、現代のミニ四駆コースの複雑化にあります。
📊 ATスラダンの主な効果
| 機能 | 効果 | 対応セクション |
|---|---|---|
| スライドダンパー | 横からの衝撃吸収 | デジタルコーナー、レーンチェンジ |
| AT機能 | コース復帰性能向上 | ジャンプ後の着地、壁乗り上げ |
| 複合効果 | 走行ラインの安定化 | 連続コーナー、高速セクション |
ATスラダンは走行中の横からの衝撃を吸収し、バンパーが持ち上がってコースに乗り上げた時にも復帰しやすくなるバンパーです。
少し前まではスライドダンパーとATバンパーは別々に使われることが多く、特にスライドダンパーは5レーンマシン専用という認識が一般的でした。しかし、3レーンマシンでもスライドダンパーの恩恵が大きいことが分かり、両方の機能を統合したATスラダンが主流になってきています。
フロントATスラダンの構造を理解する
ATスラダンの構造は、一見複雑に見えますが、基本を理解すれば作成のハードルは下がります。
✨ ATスラダンの基本構造
- バンパープレート層：スライドレールとスプリングスペースを持つ
- スライドダンパー上蓋：バンパーの上に載せて可動を制御
- AT軸：バネで支持され、上下・左右に可動する
- 強化プレート：シャーシとの接続部分
おそらく初めて見る方は「パーツが多すぎて難しそう」と感じるかもしれません。しかし、各パーツの役割を分解して理解すれば、作成は段階的に進められます。
🔧 動作の仕組み
- 横からの衝撃→スライドダンパーが左右に可動して吸収
- 壁への乗り上げ→AT軸のバネが伸縮してコース内に復帰
- スプリングの反発→元の位置に自動復帰
この2つの動きが同時に機能することで、マシンの走行が驚くほど安定します。
必要なパーツと工具の準備
フロントATスラダンの作成には、いくつかの専用パーツと加工工具が必要です。入手難易度を考慮した選択肢も提示します。
📦 必須パーツリスト
| パーツ名 | 使用部分 | 入手難易度 | 代替案 |
|---|---|---|---|
| フロントワイドスライドダンパー | 上蓋・スプリング・アルミプレート | ★☆☆ | – |
| カーボンマルチワイドリヤステー | バンパー本体 | ★★★ | FRPマルチワイドリヤステー |
| FRPマルチワイドリヤステー | 強度補強用 | ★☆☆ | – |
| リヤブレーキステー×2 | ベース・取付プレート | ★☆☆ | – |
| フロントワイドスライドダンパー用カーボンステー | バンパー本体（理想） | ★★★ | 上記マルチステー組合せ |
⚠️ 入手が難しいパーツについて
フロントワイドスライドダンパー用カーボンステーは限定パーツで入手困難な場合があります。カーボンマルチワイドリヤステーとFRPマルチワイドリヤステーを2枚重ねて代用する方法が現実的です。カーボンマルチワイドリヤステーも限定品ですが、毎年夏頃に新製品として発売される傾向があるため、定期的にチェックすることをおすすめします。
🛠️ 必要な工具
- 電動リューター＋円筒形ビット（細め・太め）
- 小さめの棒ヤスリ（角ばった形状の加工用）
- 2mm・3mmドリル（穴拡張用）
- プラスドライバー、ボックスドライバー
- 接着剤（瞬間接着剤推奨）
- 紙ヤスリ（180番程度）
電動リューターと円筒形ビットは、今回の改造では必須級となります。他の改造でも活用できるため、持っていない方はこの機会に購入を検討しても良いでしょう。
ポチップ
ミニ四駆のフロントATスラダン作成手順とスラスト抜け対策
- バンパープレートの加工とスライドレール作成
- AT機能を持たせるための穴加工
- スライドダンパー上蓋の干渉箇所カット
- スラスト抜け対策が成功のカギ
- まとめ：ミニ四駆のフロントATスラダンで安定走行を実現
バンパープレートの加工とスライドレール作成
ATスラダンの心臓部となるバンパープレートの加工から始めます。この工程が精度の要となります。
🔨 スライドレール作成の手順
- 型枠の準備
スライドアルミプレートとカーボンマルチステーをビスとナットで4箇所以上固定します。ズレ防止のため、しっかりと締めることが重要です。 - 既存ビス穴の拡張
リューターの細い円筒形ビットを使い、既存のビス穴を横方向に拡張していきます。削りすぎるとガタつきの原因になるため、少しずつ慎重に作業しましょう。 - スライドレールの幅調整
横幅は必ずしも最大にする必要はありません。一般的には、やや狭めに留めておく方が現代のセッティングに合っているとされています。
⚠️ 加工時の注意点
| 注意事項 | 理由 | 対策 |
|---|---|---|
| アルミプレートも削れる | リューターでカーボンと同時に削れてしまう | ビットをアルミに当てないよう意識 |
| 外側の削りすぎ | ステーの強度が落ちる | 強度確認しながら慎重に |
| 1枚ずつ加工推奨 | 削りすぎのリスク回避 | 2枚目でカバー可能 |
📐 スプリングスペースの作成
スライドレールの次は、スプリングを設置するスペースを作ります。
- 細い円筒形ビットで既存ビス穴を拡張開始
- ある程度大きくなったら太めのビットに交換して効率化
- 最後に細いビットで角部分を丁寧に削る
- 棒ヤスリで四隅を角ばった形状に仕上げる
この工程は時間がかかりますが、スプリングがきれいに収まるかどうかが完成度を左右します。急がず丁寧に作業することをおすすめします。
AT機能を持たせるための穴加工
ATバンパーとしての機能を持たせるため、特殊な穴加工が必要です。
🎯 AT軸用の穴加工手順
バンパープレートに、AT用のビス穴を追加します。この穴は単なる丸穴ではなく、斜めに動くように加工する必要があります。
AT軸部の穴拡張に関しては、Φ3.1mmのドリルで穴を加工しますが、プレートが可動する方向にドリルの刃を入れて削っていきましょう。
可動方向の考え方
- 前方向：スラストが入るように加工（下方向への傾斜）
- 左右方向：ローラーが壁に乗り上げた時にいなすように加工
この加工は3mmドリルや棒ヤスリで少しずつ削っていきます。削り過ぎるとリカバリーが効かないため、実際にパーツを仮組みしながら確認すると失敗が少なくなります。
🔧 2段アルミローラー用5mmパイプの活用
AT軸として2段アルミローラー用の5mmパイプを使用する方法もあります。この場合：
- ビス穴を3mm径に拡張（実際は3.1mm程度が理想）
- 5mmパイプを通す
- バネで固定する構造にする
この方法は比較的シンプルで、初心者にもおすすめです。
スライドダンパー上蓋の干渉箇所カット
スライドダンパーの上蓋は、そのままではシャーシやタイヤと干渉してしまうため、カット加工が必要です。
✂️ 上蓋加工のポイント
| 加工箇所 | 加工方法 | 目的 |
|---|---|---|
| 上部枠 | ダイヤモンドカッターで切り落とし | ATバンパー支柱との干渉回避 |
| 下部 | 円筒形ビットで削る | タイヤ・シャーシとの干渉回避 |
| ビス穴周りの出っ張り | ニッパー＋紙ヤスリ | スライド可動域の拡張 |
⚠️ シャーシ別の加工量の違い
- VZシャーシ：バンパー位置が後ろ寄りのため、下部をしっかり削る必要がある
- MA・MSシャーシ：比較的前寄りなので、削る量は少なめでOK
加工の際は、バンパーを実際にシャーシにセットしてスライドした時の干渉も想定しながら削ることが重要です。
💡 スプリングスペースの底上げ（オプション）
1.5mmステー2枚構成の場合、上蓋をそのまま取り付けると約1mmの空スペースができます。この隙間を埋めることで：
- スプリングへの力の伝わりが良くなる
- 元の位置への復帰動作がスムーズになる
厚さ1mm程度の端材（ミニ四駆キャッチャーの端材など）を接着剤でスプリングスペースの底に貼り付けます。必須ではありませんが、完成度を高めたい方には推奨される加工です。
スラスト抜け対策が成功のカギ
ATスラダンの最大の課題が「スラスト抜け」です。バネで支持された構造上、走行中の負荷でバンパーが持ち上がってしまうリスクがあります。
⚡ スラスト抜けが起こる仕組み
ATスラダンは前部分がバネで固定されているため、ローラーへの負荷によってバンパー全体が持ち上がる可能性があります。すると結果的にスラスト角が浅くなり、コースアウトしやすくなってしまうのです。
🛡️ 効果的なスラスト抜け対策
| 対策方法 | 効果 | 難易度 |
|---|---|---|
| スラスト調整プレート使用 | バンパー下に挟んで角度調整 | ★☆☆ |
| ブレーキスポンジ活用 | 衝撃吸収＋スラスト維持 | ★☆☆ |
| つっかえ棒設置 | 物理的な持ち上がり防止 | ★★☆ |
| スプリング圧力の均等化 | 左右バランスの最適化 | ★★☆ |
| ベースプレートへの突起追加 | 可動範囲を制限 | ★★★ |
突起物を使った対策の詳細
ベースプレートに大きな穴を開け、ローラーステーから3mmスペーサーなどの突起物を出します。この突起が穴の中に入ることで：
- アッパースラスト方向への動きを制限
- スラスト抜けが起きにくくなる
- 斜めに穴を拡張することで、下方向の動きは許容
ベースプレートに大きな穴が開いています。これはローラーステーから突起物を出し、この中に入るようにする事でアッパースラストになるのを防ごうという機構です。
📏 スラスト角の調整方法
上蓋のビス穴箇所を使う方法が一般的です：
- トラスビス＋小ワッシャー複数枚＋ナットで高さ調整
- このビスがシャーシと接触してダウンスラストを作る
- シャーシによって適切なワッシャー・スペーサーが変わる
注意点として、スペーサーやワッシャーがバンパーと接触するとスライド動作が阻害されます。接触する場合はバンパー側を削って干渉を回避しましょう。
まとめ：ミニ四駆のフロントATスラダンで安定走行を実現
最後に記事のポイントをまとめます。
- ATスラダンはスライドダンパーとATバンパーの複合ギミックである
- 横からの衝撃吸収とコース復帰性能を同時に実現できる
- カーボンマルチワイドリヤステーとFRPマルチワイドリヤステーの2枚重ねが現実的
- 電動リューターと円筒形ビットは必須工具となる
- スライドレールの加工は削りすぎに注意し、1枚ずつ慎重に行う
- AT軸の穴は斜め方向に加工して可動域を確保する
- シャーシによって上蓋の削る量が異なる
- スラスト抜け対策は複数の方法を組み合わせるのが効果的
- ロックナットの締め具合でスライドの硬さを微調整できる
- グリスやスキッドシールでスムーズな動作を実現する
ポチップ
記事作成にあたり参考にさせて頂いたサイト
- ATスライドダンパー（ATスラダン） 作り方・作成方法【ミニ四駆 改造】
- 【ATスラダン】効果とメリット｜かんたんな作り方とスラスト抜け対策も紹介
- 【ミニ四駆】VZシャーシフロント周りのカスタム☆「段下げATスラダン」を搭載して行く！！
- ミニ四駆作ってみた〜その240 「新マシン、製作記その2」
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