ミニ四駆の改造で最近話題になっているのが「サスペンション」の搭載です。本来サスペンションを持たないミニ四駆に、あえて衝撃吸収機構を組み込むという大胆な改造は、果たして本当に効果があるのでしょうか。MSシャーシやARシャーシを中心に、多くのレーサーが独自のアプローチでサスペンション機構を実装していますが、その効果や作り方には様々な見解があります。
この記事では、インターネット上に散らばるサスペンション改造の情報を収集し、実際の作り方から効果の検証、さらにはレギュレーション上の問題点まで、多角的に分析していきます。MSフレキやARシャーシのフロントサスなど、具体的な製作方法や必要なパーツ、さらには「本当に速くなるのか」という本質的な疑問にも切り込んでいきます。
| この記事のポイント |
|---|
| ✓ サスペンション改造の主要な4つのタイプと特徴 |
| ✓ MSシャーシとARシャーシでの具体的な製作方法 |
| ✓ サスペンション搭載のメリットとデメリット |
| ✓ レギュレーション上の注意点と速度への影響 |
ミニ四駆の改造におけるサスペンション搭載の実態
- サスペンション改造の目的は着地姿勢の制御にあること
- MSシャーシとARシャーシが主な改造対象であること
- 上下反転型とシャーシ内蔵型の2つが主流であること
- 四輪独立サスペンションという高度な改造も存在すること
サスペンション改造の目的は着地姿勢の制御にあること
ミニ四駆におけるサスペンション改造は、一般的な自動車のサスペンションとは少し異なる目的で開発されています。
🎯 サスペンション改造の主な目的
| 目的 | 詳細 |
|---|---|
| ジャンプ後の着地姿勢制御 | テーブルトップやジャンピングストレートでの安定性向上 |
| レーンチェンジャー攻略 | 路面変化への対応力アップ |
| ウォッシュボード対策 | 凸凹路面での走行安定性確保 |
| 衝撃吸収 | コース設置物からの衝撃を和らげる |
ミニ四駆におけるサスペンションは、ジャンプ後の着地姿勢制御に使用します。主に、テーブルトップ、レーンチェンジャー、ジャンピングストレートなどで安定攻略しようというものです。
一般的に、サスペンションとは「路面からの衝撃や振動を吸収して車体を安定させる装置」を指します。しかし、ミニ四駆の場合は着地時の跳ね返りを抑えることが最大の目的となっているのが特徴的です。
💡 通常のマスダンパーとの違い
- マスダンパー：重りの慣性を利用して衝撃を吸収
- サスペンション：バネの伸縮で衝撃を吸収し、シャーシ自体が可動する
サスペンション改造が注目され始めたのは、おそらくミニヨンクラブの「MSサスペンション普及委員会チーム」が発端だと考えられます。MSシャーシのポテンシャルを最大限引き出す要素として、この改造手法が広まっていったようです。
MSシャーシとARシャーシが主な改造対象であること
サスペンション改造を施すシャーシには向き不向きがあり、現状ではMSシャーシとARシャーシでの製作例が多く確認されています。
🔧 シャーシ別の改造適性
| シャーシタイプ | 改造難易度 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| MSシャーシ | ★★★☆☆ | 構造的に改造しやすく、情報も豊富 |
| MAシャーシ | ★★★☆☆ | MSシャーシと似た構造で応用可能 |
| ARシャーシ | ★★★★☆ | 片軸モーターで工夫が必要 |
| 旧シャーシ | ★★★★★ | 構造上の制約が大きい |
MSシャーシが改造の主流となっている理由は、その構造的な特性にあります。ミッドシップレイアウトで重量バランスが良く、フロントとリアのユニットが比較的独立しているため、サスペンション機構を組み込む余地があるのです。
MAシャーシは、今回みたいな改造をメーカーが想定していなかったと思うのですが、色々ためして楽しんでいます。
出典：ミニ四駆MAシャーシサスペンションマシン フロントサスペンション制作改造方法
一方、ARシャーシは片軸モーター構造のため、MSシャーシと比べると改造の難易度は上がります。しかし、フロント部分へのサスペンション搭載例は存在しており、工夫次第で実装可能だと言えるでしょう。
📌 VZシャーシやS2シャーシでの可能性
VZシャーシやS2シャーシでのサスペンション改造については、情報が限られています。ただし、市販のサスペンション用パーツの中には「AR/MA/FMA/S2シャーシ対応」とされているものもあるため、一般的には可能性はあるかもしれません。
上下反転型とシャーシ内蔵型の2つが主流であること
サスペンション改造には大きく分けて4つのタイプがありますが、中でも実用性と製作難易度のバランスが取れているのが「上下反転型」と「シャーシ内蔵型」です。
🛠️ サスペンション改造の主要4タイプ
| タイプ | 難易度 | 特徴 | 駆動系への影響 |
|---|---|---|---|
| 上下反転型 | ★★☆☆☆ | シャーシを逆さまにして使用 | ギアが物理的に離れる |
| シャーシ内蔵型 | ★★★☆☆ | ユニット内にスプリング内蔵 | ギアの噛み合わせが変化 |
| トレーリング型 | ★★★★☆ | RC車のような本格的構造 | 噛み合わせ維持可能 |
| 四輪独立型 | ★★★★★ | 各輪が独立して稼働 | ドライブシャフト加工必須 |
【上下反転型の特徴】
上下反転型は、MSシャーシを文字通り上下逆さまにして、ノーズとテールのユニットを可動させる方式です。
✓ メリット
- 切断加工が比較的少ない
- 強度を確保しやすい
- 軽量に仕上がる
✗ デメリット
- サス稼働時にギアが離れてトルク抜けが発生
- ボディの固定方法を工夫する必要がある
- 電池が落ちるリスクがある
上下反転させ、ノーズ、テールの各ユニットを稼動させるもの。サス稼働時に物理的にギアが離れるため、再度接触した際ギアへのダメージを軽減させるためにワンウェイホイールとの併用がよく利用されている。
【シャーシ内蔵型の特徴】
シャーシ内蔵型は、通常の向きでボディを載せることを前提に、ユニット内部にショックダンパー（スプリング）を組み込む方式です。
✓ メリット
- 通常のボディが装着可能
- モーターやギアの交換が容易
- 見た目が通常のマシンに近い
✗ デメリット
- ユニットへの精密な加工が必要
- サス稼働時のギアの噛み合わせ問題
- 反動を打ち消す別の機構が必要
N-04・T-04強化ユニットのパーツを使用する方法が一般的で、MAシャーシのフロント部分に組み込む事例が多く報告されています。
四輪独立サスペンションという高度な改造も存在すること
最も高度なサスペンション改造として、四輪独立サスペンション（ダブルウィッシュボーン系）があります。これは本格的なRC車の構造に近いアプローチです。
⚙️ 四輪独立サスペンションの構造
各輪が独立して上下動
↓
ドライブシャフトで動力伝達
↓
路面追従性が大幅に向上
某動画サイトに動画が投稿されている。こちらも関西の某ビルダーによって作製されたもの。
📊 四輪独立サスの評価
| 評価項目 | 評価 | 備考 |
|---|---|---|
| ショック吸収性能 | ★★★★★ | 路面に対して最も高い性能 |
| 車高調整の自由度 | ★★★★★ | 自由に調整可能 |
| 製作難易度 | ★★★★★ | 非常に高度な技術が必要 |
| 駆動ロス | ★★☆☆☆ | ドライブシャフト加工で多少発生 |
| コーナリング安定性 | ★★☆☆☆ | 車体がロールしやすい |
四輪独立サスペンションを実現するには、ドライブシャフトの加工が不可欠です。これは、サスペンションが稼働した際にも、各ホイールへ確実に動力を伝えるために必要な処理となります。
ただし、この改造方法は情報が少なく、製作には相当な技術と試行錯誤が求められるでしょう。一般的なレーサーが取り組むには、おそらくハードルが高すぎるかもしれません。
ポチップ
ミニ四駆にサスペンション改造を施す具体的な方法と注意点
- MAシャーシのフロントサスは強化ユニットを使う方法が有効であること
- ARシャーシのサスペンション製作にはカーボンプレートが必要であること
- MSフレキ改造は少しずつ削って調整することが成功の鍵であること
- サスペンション改造には速度低下のリスクがあること
- まとめ：ミニ四駆の改造でサスペンションを搭載する際の総合的な判断
MAシャーシのフロントサスは強化ユニットを使う方法が有効であること
MAシャーシにフロントサスペンションを搭載する改造では、MSシャーシ用の強化ユニットパーツを活用する方法が実績として報告されています。
🔨 MAシャーシ フロントサス製作の必要パーツ
| パーツ名 | 用途 | 備考 |
|---|---|---|
| GP.411 N-04・T-04 強化ユニット | サスペンション本体 | レッド推奨 |
| 72mmブラック強化シャフト | ホイール軸 | 4本必要 |
| バネ・ネジ類 | サスペンション機構 | 強化ユニットに含まれる |
| デザインナイフ | シャーシ加工用 | 精密作業に必須 |
| ミニルーター | シャーシ削り出し用 | PROXXON MM50推奨 |
ちなみに、この改造には、72mmシャフトが必要になります！
出典：ミニ四駆MAシャーシサスペンションマシン フロントサスペンション制作改造方法
📝 製作手順の概要
- マスキングテープでカット位置をマーキング
- カットしたい部分を明確にする
- リューター使用時の失敗防止になる
- MAシャーシフロント部分を慎重に削る
- 少しずつカットすることが安全
- 強化ユニットが適合するまで微調整
- モーターカバーの干渉部分を削る
- クラウンギアが飛び出るギミックに対応
- 駆動系の良さを活かすために丁寧に作業
- サスペンション導入と動作確認
- ねじれ動作もチェック
- スムーズに稼働するか確認
この改造を施したマシンは、サイドからのねじれにも対応できるようになります。ただし、駆動系の精度を保つことが最も重要で、雑な加工をするとせっかくのMAシャーシの性能が台無しになってしまう可能性があります。
ARシャーシのサスペンション製作にはカーボンプレートが必要であること
ARシャーシは片軸モーター構造のため、MSシャーシとは異なるアプローチが必要です。特にフロントサスペンションの製作には、カーボンプレートやFRPプレートを使った補強が重要になってきます。
🛡️ ARシャーシのサスペンション製作で使用する材料
| 材料 | 役割 | 選択基準 |
|---|---|---|
| カーボン製プレート | アッパー・ロアアーム | 穴のサイズと位置が理想的 |
| FRP製プレート | 代替素材 | カーボンがない場合の選択肢 |
| MSシャーシ用ブレーキセット | 縦パーツ素材 | ドラサスユニット用 |
| スペーサー各種 | 高さ調整 | 6mm、6.7mmなど |
カーボン製の方が穴のサイズと位置が良いのでそちらを採用していきます。まぁFRP製でも大丈夫です。
出典：756 ミニ四駆ARシャーシのフロントサスを作ってみる。
⚠️ ARシャーシ特有の注意点
ARシャーシでサスペンションを製作する際には、いくつかの技術的な課題があります。
- プロペラシャフト干渉問題：シャーシを刳り貫く際、プロペラシャフトを支える部分を残す必要がある
- ギアの噛み合わせ維持：フレキ化によるトルク抜けに注意
- 電池の固定：振動で電池が外れないよう対策が必要
実際の製作例では、最初の試作でプロペラシャフト支持部を削りすぎて失敗したケースが報告されています。固定側と可動側のバランスを保つことが、ARシャーシでのサスペンション改造成功の鍵と言えるでしょう。
MSフレキ改造は少しずつ削って調整することが成功の鍵であること
MSフレキ（MSシャーシのフレキシブル化）は、サスペンション改造の中でも比較的メジャーな手法です。しかし、成功させるためには慎重な作業が求められます。
✂️ MSフレキ製作のポイント
| 作業段階 | 重要ポイント | 失敗防止策 |
|---|---|---|
| 設計段階 | どこを削るか明確にする | 超速ガイドを参考にする |
| 削り作業 | ヤスリひとかけで変わる | 少しずつ削って確認 |
| 表面処理 | スムーズな稼働のため | 丁寧に仕上げる |
| 動作確認 | 前後ユニットの可動範囲 | 何度も繰り返しテスト |
作る上で感じたのは、ヤスリひとかけだけでスムーズさが激変するので、少しずつ焦らずに加工することがとても大切だなということ。
🔧 必要な工具と材料
- 6mmドリルビット（場合により5.5mmも）
- ボックスドライバー（六角軸ビット取付用）
- N-04強化ユニット（前後で形が違うので注意）
- スプリング類（東北ダンパーなど）
MSフレキの製作では、ドリルビットを六角軸タイプにすることで、ボックスドライバーに取り付けられるという工夫も報告されています。こうした小さなテクニックの積み重ねが、作業効率を大きく向上させるようです。
💭 MSフレキの効果に対する期待
多くの製作者が、MSフレキには「ショックアブソーバーとしての効果が高そう」という印象を持っています。特にフロント提灯ダンパーとの併用で、相乗効果が期待できるという見解もあります。
サスペンション改造には速度低下のリスクがあること
サスペンション改造の最大の疑問点は、**「本当に速くなるのか？」**という点です。実は、改造方法によっては逆に遅くなってしまうケースも報告されています。
📉 サスペンション改造で速度が落ちる原因
| 原因 | メカニズム | 対策 |
|---|---|---|
| トルク抜け | ギアの噛み合わせ悪化 | ワンウェイホイール使用 |
| 駆動ロス | シャフト傾斜による抵抗増加 | 精密な加工で最小化 |
| 重量増加 | サスペンション機構の追加 | 軽量パーツの選択 |
| シャーシ剛性低下 | フレキ化による強度不足 | 補強プレートの追加 |
いくら立体コースがジャンプ要素の強いコースと言ってもギヤがガタガタ動いてシャフトも傾くシャーシで速くなるのか？
⚡ 速度低下を防ぐための考え方
サスペンション改造で速度を維持するには、以下の点を意識する必要があります。
- 固定側の精度を最優先：シャーシ強度 > 駆動系 > サスペンション
- ディファレンシャル機構の問題：等速ジョイントがないと効果が半減
- マスダンパーとの併用：サスの反動を打ち消す
実際の改造例では、「フレキ化したら明らかに遅くなった」という報告もあります。一般的には、サスペンション自体が速さに直結するのではなく、**「着地後の安定性向上によるコースアウト防止」**が主な効果だと考えられます。
まとめ：ミニ四駆の改造でサスペンションを搭載する際の総合的な判断
最後に記事のポイントをまとめます。
- ミニ四駆のサスペンション改造は着地姿勢制御とウォッシュボード対策が主目的である
- MSシャーシとARシャーシが改造の主流で、MAシャーシでも実装可能である
- 上下反転型とシャーシ内蔵型が実用性と難易度のバランスが良い
- 四輪独立サスペンションは最高性能だが製作難易度が極めて高い
- MAシャーシのフロントサスにはN-04・T-04強化ユニットと72mmシャフトが必要である
- ARシャーシではカーボンプレートを使ったアーム製作が効果的である
- MSフレキは少しずつ削って調整することが失敗を防ぐコツである
- サスペンション改造は場合によっては速度低下を招くリスクがある
- 速さよりも走行安定性とコースアウト防止が実質的なメリットである
- レギュレーション違反にならないようギアの組み合わせに注意が必要である
ポチップ
記事作成にあたり参考にさせて頂いたサイト
- ミニ四駆MAシャーシサスペンションマシン フロントサスペンション制作改造方法 : 子育て＆ミニ四駆のブログ/Morinokuma
- 756 ミニ四駆ARシャーシのフロントサスを作ってみる。 | あに。のブログ
- ミニ四駆作り③ ＭＳフレキを試してみました｜ウクモリ ヒロオ
- ４輪独立サス ミニ四駆 | ふじんじのブログ
- ミニ四駆 シャーシサス改造の疑問 | mixiユーザー(id:32212643)の日記
- サスペンション – ミニ四駆改造マニュアル@wiki
- ドラゴンサスペンションが作りたい | フレイグ
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